チベットの謎の石塔「カル」

中路郷のカル カルを目指して崩れかけのカル

昨年の10月29日から11月4日まで、学生たちと一緒に中国四川省のカンゼ・チベット族自治州へフィールドワークに赴き、現地の集落やその周辺に点在する「カル」とよばれる石塔を見て回ってきました。「碉楼」や「石碉」などとも呼ばれるカルは、おおむね12世紀代から17世紀頃にかけてつくられたとされています。私たちが今回拠点にした丹巴県周辺だけでも550を超えるカルが現存していますが、その性格や用途については、はっきりわかっていません。まさに「謎の遺跡」です。

カルは、民家に隣接するものもあれば、山の中腹にポツンと存在するものもあります。標高3000m近い山奥で、藪をかき分けてカルを目指す道のりは、過酷そのものです。しかし、息を切らしてたどり着いた先で、崩れかけながらも厳然とたたずむカルを目にしたとき、私たちは息をのみました。悠久の時を見守ってきたカル。「なぜこんなところに、こんなものがつくられたのだろうか…」静かな興奮に、私たちは震えました。(金宇大)