台湾実習の報告

文化人類学ゼミは、2023年8月28日から9月4日まで、台湾にて実習を行いました。

 

主な目的は、台湾の習俗を理解することと、4年生の卒論のテーマについて台湾の状況を調査し比較することです。
まず、台中市東勢区では、中元節の儀礼を調査し、祖霊と餓鬼に対する祭祀の違いを勉強しました。

また、客家人の防御機能を備えた集落の村おこしについても詳細な説明を受けました。学生たちは、地域文化学科の授業で学んだことを思い出しながら、説明を聞いたようです。

 

後半、台北のAMA MUSEUM阿嬤家 和平與女性人權館を見学し、台湾の元慰安婦の方々の背景や戦後の暮らしについて説明を受けました。身近にある人身売買や性犯罪の延長に戦時性暴力があることが、工夫を凝らした展示で表現されていました。

学生たちは、「見学前は緊張していたが、温かみのある展示でホッとした。より多くの人に見学してもらいたい」と感想を述べていました。

 

今回の経験が、何かの種となり、芽吹いてくれることを願っています。9人もの学生を温かく迎えてくださった東勢の皆さん、通訳を務めてくれた卒業生の李崇瑜さん、その他お世話になった皆様に、厚く御礼を申し上げます。(横田祥子)

 

写真1:中元節での施餓鬼

写真2 台中市東勢の客家人集落の見学

写真3 インタビューの様子

写真4 AMA MUSEUMの見学

 


10月7日「ひこね考古学ミーティング2023」を開催します

滋賀県立大学は、地元、彦根市さんとタッグを組ませていただいて、考古学の調査研究に共同で取り組んでいます。その中心的なプロジェクトとして、今年から荒神山古墳群の発掘調査を開始しました。

(2023年3月19日のブログ記事参照 荒神山古墳現地説明会のご案内 (usp.ac.jp)

 

この荒神山古墳群の発掘成果をはじめ、彦根の遺跡や文化財について一般の方々に広く知っていただきたく、来る10月7日に「ひこね考古学ミーティング2023」を滋賀県立大学で開催する運びとなりました。彦根市さんによる文化財調査のお話や、彦根東高等学校の生徒さんたちによる彦根城跡の岩石調査の報告など、盛りだくさんの内容です。稲部遺跡で発見された日本最古級の「靫」(ゆき:矢の収納具)の実物も初公開されます。詳細は以下のチラシをご参照ください。

 

文化財をキーワードに、行政・大学・地域が一体となった交流の場を実現できればと考えています。ぜひご参加ください。(金)

 

(ダウンロードはこちから➡)ひこね考古学ミーティング2023


環琵琶湖文化論実習3班「地域資源としての文化遺産をいかに活用していくか」

金(考古学)と櫻井(社会学)が担当する「環琵琶湖文化論実習」3班では、「地域資源としての文化遺産をいかに活用していくか」をテーマに、フィールドワークを実施しました。

竹生島や朽木を歩き回ったり、滋賀県文化財保護協会で土器を洗う体験をさせていただいたり、安土城跡を登ったり、忍術屋敷のからくりに驚いたりと、盛沢山の内容となりました。

 

大変だったのは、予想外の事態でスケジュールの変更を余儀なくされたことでした。

もともと長浜港から竹生島に渡ったあと、竹生島から今津港に渡るという琵琶湖横断ルートを予定していました。しかし、台風の影響で竹生島から今津に行くことができなくなり、急遽、竹生島から長浜へ引き返し、陸路で高島市を目指さざるをえなくなりました。これだけでは終わりませんでした。2日目には高島市から大津市にある滋賀県文化財保護協会に向かったのですが、そのルート上で交通事故が発生し、バスでは迂回することもできなかったため、高島市から長浜市に引き返し、高速道路を使って大津に向かうという、予定とは真逆のルートをとらざるをえなくなってしまいました。

 

そんなハプニング続きの実習でしたが、こうしたことも含めて実習であると改めて実感いたしました。ご協力いただきました地域の方々、急なルート変更にご対応くださったバスの運転手の方々、本当にありがとうございました。(櫻井悟史)

 

写真1 竹生島での集合写真

写真2 滋賀県文化財保護協会での土器洗い実習

写真3:安土城跡に登る前の学生のレクチャー


環琵琶湖文化論実習2班「滋賀の景観から読み解く地域文化」

環琵琶湖文化論実習2班は「滋賀の景観から読み解く地域文化」と題し、景観まちづくり、東アジア交流史の視点から、滋賀の独特の景観を育む自然環境、さらには地域文化の持続的な発展について学びました。

 

参加メンバーには県外出身者も多く、琵琶湖を一周した今回の実習では、大学キャンパス近辺では見られない湖南・湖西・湖北の独特な自然景観や街並み風景に魅了されたようです。

10月からは、得られた情報をもとに実習報告書としてまとめることになります。
最後に、今回のフィールドワークにご協力いただいた地域の皆様方に心より御礼申し上げます。(萩原 和)

 

写真1:学生による琵琶湖大橋周辺の説明

 

写真2:藤樹書院に関するレクチャーの様子

 


8/8・9・10 「環琵琶湖文化論実習」の学外実習 1班「世界農業遺産『琵琶湖システム』の歴史と現在」

「環琵琶湖文化論実習」はフィールドワークに重きを置く本学科の看板授業です。

コロナの縛りから解放された今年度は、二泊三日の学外実習も復活しました。

 

塚本(地理学)・高木(歴史学)が引率する1班のフィールドワークは、「世界農業遺産『琵琶湖システム』の歴史と現在」をテーマに、文字通り琵琶湖をぐるりと一周しました。

湖と川・里・森の結びつきが生んだ近江の暮らしは、『琵琶湖システム』としてその価値を評価され、2019年2月に日本農業遺産(農林水産省)、2022年7月に世界農業遺産(国連食糧農業機関/FAO)の認定を受けました。

 

私たちは、近江盆地の農業、琵琶湖漁業、生活文化(淡水魚食、発酵、水と近い暮らし)などについて調べ、それらの現場を実際に見に行ってきたということになります。

 

特に二日目が濃密でした。午前は野洲市須原で『琵琶湖システム』の最前線といえる環境配慮型農業(魚のゆりかご水田)を視察し、プロジェクト・リーダーである堀彰男氏のレクチャーを受けました(写真2)。

そして午後は高島市針江へ移動し、「カバタ(川端)」という琵琶湖とつながった一般家庭の水場(写真3)を見学しました。『琵琶湖システム』が近江の暮らしであることを体感できました。(塚本礼仁)

 

写真1:近江八景浮御堂

 

写真2 魚のゆりかご水田のレクチャー

 

写真3 針江エコツアー