9月から東アジア国際関係史を担当する李晐鎮(イヘジン)と申します

 はじめまして。9月1日付で地域文化学科に着任し、東アジア国際関係史の分野を担当する李晐鎮と申します。韓国の大田市出身で、大学時代からはソウルで過ごしました。また、2015年から2022年の1月まで京都大学に留学した経験を持っています。

 専攻は近世日朝関係史です。具体的には朝鮮通信使や日朝貿易、そして近世日朝関係における対馬藩の外交面での役割などに関心を持ち、研究しています。韓国の大学では、日朝関係史の領域にとどまらず、東アジア世界全般の外交・交流史に関する研究を進めてきました。

 対外関係史の研究において最も重要なのは、「均衡的な見方」であると思います。一方の史料のみでは、対外関係史の全体像を把握し難いため、各国・各主体が残した様々な史料を比較・対照する作業が求められます。また、国家史の領域にとどまらず、前近代の東アジア世界に存在した様々な民族・地域集団の立場にも目を向ける必要があると思います。漢文も、候文も、まだ十分な力量を持っているとはいえませんが、様々な史料を熱心に読むことで、地域文化学科の皆様とともに東アジアの対外関係史が有する立体性を感じたいです。

 また、「百聞は一見に如かず」という言葉のように、歴史学という学問には、フィールドワークを通じて得られる様々な経験も大事だと思います。機会があれば日本を含めた東アジアの各地を皆様とともに見学し、現地の文化や対外関係の歴史像を考えてみたいです。

 教育や研究の面で未だ足りない部分も多いと思いますが、皆様のご期待にお応えできるよう頑張っていきたいと思います。これからよろしくお願いいたします。(李)

【写真1】韓国・東国大学の<人文キャンプ>で、対馬市万松院の三具足について案内

 

【写真2】韓国・東国大学の<人文遊覧団>で、順天倭城を見学(なぜか変なポーズになっている)

 

【写真3】韓国・牙山市の顕忠祠(李舜臣の祠堂)が主催した教員研修プログラムで、「日本の戦国時代と豊臣秀吉の朝鮮侵略」という主題で講義


滋賀県の物語の舞台を旅してきました(環琵琶湖文化論実習3班)

滋賀県には、たくさんの物語があります。そうした物語は、滋賀県で起こった歴史的事実や、滋賀県に残されている数々の文化遺産に触発される形で生まれています。そこで、1回生向けの必修授業である「環琵琶湖文化論実習」の3班では、「滋賀県の物語を旅する――事実と虚構の共生」と題したフィールドワークを実施しました。

 

本授業では、事前学習で各作品を読み込んだあと、その作品の舞台になった場所を訪れるという方法を採用しました。宮島未奈氏の『成瀬は天下を取りにいく』、『成瀬は信じた道をいく』については、大津の観光に焦点を当て、実際にミシガンクルーズに参加してみました(図1)。今村翔吾氏の『塞王の楯』については、穴太衆の石垣、国友鉄砲、京極高次に注目し、大津市坂本、長浜市国友町、大津市歴史博物館(図2)を回りました。特に国友鉄砲については、専門家である太田浩司氏にレクチャーしていただきました(図3)。井上靖氏の『星と祭』については、渡岸寺観音堂の十一面観音や文学碑を調査したうえで、「『星と祭』復刊プロジェクト」に取り組んだ出版社である能美舎がある丘峰喫茶店で、観音ガールこと對島佳菜子氏にご講演いただきました(図4)。その他にも、『八本目の槍』(図5)、『街道をゆく』、『光る君へ』(図6)、『けいおん!』、『るろうに剣心』などの作品を取り上げました。

 

学生たちは、熱心に作品を読み込み、作品に登場する場所を訪れることで、フィクションと歴史的事実の関係について様々なことを考えたことと思います。こうした調査ができましたのも、訪問先の地域の方々の助けがあったからこそであります。この場を借りて、御礼申し上げます。ありがとうございました。(櫻井悟史)

 

(図1)ミシガンクルーズに参加する学生たち

(図2)大津市歴史博物館で京極高次についてレクチャーを受ける学生たち

(図3)国友鉄砲について太田氏からレクチャーを受ける学生たち

(図4)丘峰喫茶店で對島氏の講演を熱心に聞く学生たち

(図5)『八本目の槍』の聖地のひとつ賤ケ岳にて

 

(図6)『光る君へ』の聖地のひとつ石山寺にて