【研究分野紹介】日本中世史
講師の高木純一です。わたしの専門は日本史とりわけ中世史です。
ごく大雑把に言うと、鎌倉幕府、室町幕府、そして戦国大名たちの時代を、日本史では「中世」に区分しています。
有名な織田信長は、「天下布武」の印判を使用したことでよく知られています。高校の日本史教科書では、「天下を武力によって治める意志を明らかにした」ものと説明されています。
なんとも勇ましい、信長らしいはなしです。しかし、最新の研究によると、ここで言う「天下」とは、いわゆる“日本全土”を指すのではなく、「畿内」と呼ばれていた地域、現在の京都・大阪・奈良あたりだけを指していたらしいことが明らかにされています。
なんだか、急にこぢんまりとした感じがしてきますね。これが正しいとすれば、織田信長という人物の評価についても、見直してみる必要が出てくるでしょう。
歴史学の面白さ、なんとなく伝わりましたでしょうか。教科書に書いてあることは不変不動の「事実」ではなく、研究の進展によって、これからまだまだ書き換えられていくものなのです。
大学で歴史学を学ぶことによって、みなさんは、この「天下布武」の例のような“定説を覆す”ちからを身につけることができます。少なくとも、教科書に書いてあることを鵜呑みにせず、検証するという姿勢が身についているはずです。
真偽不明の情報が日々大量に飛び交うこの現代社会、こうした“歴史学的な能力”は必要不可欠のものだとわたしは思います。
なるべく多くのみなさんが、歴史学の世界に入門してくださることを期待しています。
*写真のキャプション
(1枚目)敬愛する南方熊楠の顕彰碑(和歌山県)で記念撮影
(2枚目)中世の面影をよく残す、大分県の田染荘(たしぶのしょう)の村落景観
(3枚目)織田信長の「天下布武」の朱印状(東寺百合文書WEBより転載)