高野山での石造物調査

 先月、地域文化学科の考古学ゼミメンバーで、高野山での石造物調査を実施しました。高野山の麓の慈尊院から山上の金剛峯寺へと通じる町石道(ちょういしみち)は、空海によって開山されて以来、主要な参詣道とされてきた全長約22kmにおよぶ高野山の表参道です。ここには「町石」と呼ばれる石製の道標が1町(約109m)ごとに180石建てられています。これらの町石は、鎌倉時代に各地から集まった石工たちによってつくられたもので、よくよく見ると一つ一つ細部の特徴が異なっています。こうした違いを追究することで、どの地域からやってきた石工が製作したものかを探っていくことができるのです。

 

 あいにくの雨の中、朝から一つずつ町石の細部写真を撮影しながら参道を登っていきました。100石ほどを記録したところで日没を迎えタイムアップ、あとはただ歴史に思いを馳せながら無心に歩き続け、満身創痍になりながら真っ暗の登山道をなんとか登り切りました。12時間におよぶ大変な調査となりましたが、貴重な記録が得られたのはもちろん、実際に登ってみたことで、登拝の過酷さとそれでも霞まない高野山の荘厳さを、まさに肌で感じることができました。フィールドワークの重要さと面白さを改めて確認した調査でした。(金宇大)

 

【写真1】 町石の調査風景
【写真2】 序盤でまだ元気だったころの一行
【写真3】 日没を迎えて焦る一行