再開発事業と景観まちづくり

地域計画分野で必ず扱うテーマに、鉄道の連続立体高架事業があります。主たる目的は、踏切廃止による安全安心な道路環境づくりや交通渋滞の緩和などです。併せて区画整理事業も実施され、駅周辺の回遊性を高めるための事業も展開されます。

さて、写真は、高架事業を終えた山陰本線を走行する列車から撮影した福知山城です。高架事業は平成4年に採択され、平成17年にJR線高架が完成しました。事業全体としては、その後、第三セクターのKTR宮福線も高架工事され、平成21年に事業完了しています。

私自身、はじめてこの区間を利用しました。お城を見るなりとっさに写真を撮ってしまいました。おそらく地上線の頃は、このアングルでは福知山城を眺めることはできなかったでしょう。見えたとしても周辺建物や植栽にさえぎられていたかもしれません。景観まちづくりとして捉えると、「どの立ち位置で、どのくらいの角度で対象を仰ぎ見るか」はとても重要です。この角度を、専門用語で「仰角(ぎょうかく)」と呼びます。感性実験においても角度によって対象物のイメージが大きく変化することが実証されています。

私自身、日頃からまちを観察することが好きなのですが、実は内心複雑だったりします。高架や建物の高層化は、対象物(ここでは福知山城)をはっきりを眺めるうえでは快適です。その一方で、お城から、周辺の構造物(高架や建物)を眺めるとどうでしょうか。場合によっては無秩序な景観が展開されているかもしれません。おそらく福知山駅の高架事業も慎重に議論を重ねてデザイン検討したと思われます。場合によっては、3D景観シミュレーションなどを用いて住民説明会を実施したのではないでしょうか。景観を創るということは、さまざまな「立ち位置」で考え、各プロセスを可視化しながら「計画」していくことといえます。

実は、こうした視点を盛り込んだ新規科目として、4月より「地域計画概論」を提供します。授業の中で景観づくりにまつわるエピソードもたくさん披露したいと思います。どうぞお楽しみに!(萩原 和)

写真:走行中の列車より福知山城を望む(2019年2月2日筆者撮影)

参照サイト:中丹広域振興局(http://www.pref.kyoto.jp/chutan/doboku-nisi/douro-nisi03.html