繭玉


滋賀県の湖東地区は、米どころとして知られています。なかでも愛荘町は、米作りをはじめとする農村地帯として長い歴史を刻んできました。

年末、どの家からも聞こえてきた威勢のいい餅つきの音。臼と杵が便利な餅つき機に変わっても、やはり農家にとっては大事な行事。来年の豊作を願う繭玉づくりについて、教えていただきました。


私の家では、このお鏡餅をつくときに、繭玉というものを作ります。枝ぶりのよい小枝を切ってきて、それに小さく切った餅をいくつもいくつもひっつけるのです。ちょうど稲の穂がいっぱいに実ったように餅を付けるのです。そうすると枝がたわみ、本当に実りきった稲穂のようになります。

これは何のためにするのかというと、言わずとも知れた稲の豊作を祈るためのものなのです。この繭玉のように、枝もたわわに実ってほしいというお祈りです。

なお、この繭玉の枝の中心部に、大きな餅を二つくっつけます。これは、両親を表し、家内じゅうが親を中心にして家じゅうの和合と安全を、合わせて祈るものです。この繭玉は、私たちの地区が全部やっていることではないのですが、私の家で古くからやっている行事として、皆様にお伝えさせていただきました。


アーカイヴズNo. 165A
番組名:ふるさと談話室「年末の餅つき、お正月のまゆ玉」
語り手:森惣十市さん(宮後)
放送日:1980年8月9日