サンタクロースは誰?

寒い冬こそ温かな催しが必要。厳かに祝うお正月に先立って訪れるクリスマスは、大人も童心に帰れる楽しい行事です。区長さんがサンタに扮する手作りイベントを、子供からお年寄りまでそれぞれに喜ぶ様子が賑やかな声で伝わってきます。


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12月24日はクリスマスイブ。各家庭はもちろん、各字の子供会でもクリスマスパーティーで賑わったことでしょう。そんななか、松尾寺北地区では、区長さんがサンタクロースに扮してプレゼントを配るというユニークな催しが行われました。

—あの、区長さんね、いまサンタさんの姿になられたんですけど、赤い服でヒゲつけられていかがですか?

「んー、なんかこう照れくさいな。これからずっと、あんまり遅くなると子供ら寝ますんで、はい」

—この鈴(りん)は何ですか?

「まぁ、これ鳴らしていくと、サンタさん来はった、ということで子供が喜んで出迎えてくれるんやと思いますし。これから回ってきます」

—午後6時、公民館でサンタクロースに変装した松尾寺北区長、北川忠太郎さん62歳は、さっそく子供たちと一人暮らしのお年寄りの家を訪ねました。

「こんばんはー」「ご苦労さまですー」「ほれ、サンタのおじいちゃん」「ありがとございます」「おもちゃ!」「おもちゃないわ(笑)。これや」「わぁ~、ありがとうございます!」「あっくん、何入ったある? いっぺん開けてみ」「開けてみて、て」「バッグや」「やったねぇ、いいの」

—プレゼントの中身は、18人の幼児にはクリスマスブーツ、17人の小学生にはスポーツバッグやナップサック、靴に鉛筆。また二人のお年寄りにはクリスマスケーキなど。プレゼントにはメッセージもついています。

「あっくん、農園で覚えた、ものを育てる心をいつまでも大切にしてくださいって書いてある。農園のサンタクロースから、やて。いいなぁ!」「ありがとうございます」「ありがとう」

—サンタクロースの訪問は三年前から続いている、と、区長さんです。

「なんかこう、三年ほど前に当時の役員さんがこうゆうこと思いついてやってくれはって、それからもうずーっと毎年やってまんねやけど。まぁ今年は子供らが、子供農園で大変よく頑張ってスイカとか芋とか、なんやかや野菜も作って、またそれを各家に配ってくれまして。また地蔵盆にもスイカなど割ってみなに食べてもらうよなことやってましたので。まぁ今年は子供会が大変頑張ったので、こういうことをやって喜んでいただきたいと思いますし」

—また今年はプレゼントの中身が例年より豪華になりました。

「今年、子供会が自分らの欲しいもんを希望して、それに近いものを子供会の方で準備したり、字でもそれに付け加えたりして、毎年よりはちょっとカサのはるもんが配られてると思いまんねやわ。子供らが廃品回収やって、そのお金も多少こっちのほうに回ってるようです」

—子供たちが夢にまで見たサンタクロースがイブの夜、自分の家にやってくると、いまでは子供だけではなく家族中で楽しみにされています。富永善五郎さんのお宅もそのひとつです。

「もうお爺さんお婆さん大喜びです」「あぁ、お爺さんお婆さんのほうが」「へへへへ」

「まぁ、いま子供の教育なんかも難しい言われてますので、在所ぐるみでこゆこと考えてくれはるのもありがたいんですけど、それに増して我々親のもんが、もっとしっかりせなあかんおもてますけども」

「毎年子供も楽しみにしてまして、今晩もいつ来はるか、いつ来はるか、りんりんりんりん、いうて口真似してずっと待ってました」

「これからもご苦労さんですけど続けてやっていただきたい思います」

—松尾寺北のサンタクロース。毎年プレゼントの中身も、サンタクロースの顔も変わって、楽しさ2倍です。

アーカイヴズNo. 300
番組名:町のアンテナ「区長さんがサンタ」
語り手:北川忠太郎さん他(松尾寺北)
放送日:1990年12月26日