学部生の頃から、中世の集落や中世の土器陶磁器について興味を持っており、研究を続けています。中世集落の研究は文献史学の側から進められているイメージが強いですが、人々がどのような土地にどのような集落を作り、その集落はどのような役割を果たしたか、また何故その集落が廃絶してしまったのか考えるには、土地に刻まれた痕跡を示す発掘調査成果の存在を欠かすことはできず、考古学的に検討できる強みでもあります。現在は滋賀県内で見つかった中世遺跡の事例を中心に、中世の集落形態、集落の立地と集落から出土する土器陶磁器の組成比較から、中世の集落がどのような役割を果たしたのか検討を試みています。
もともと考古学というよりは中近世の城館について興味を持っており、滋賀県立大学人間文化学部地域文化学科に入学しました。日本考古学がご専門の中井均先生の下で考古学を学び、自治体が行なっている発掘調査に参加する中で、次第に興味が中世の考古学全般に広がりました。学部3・4年生の頃、彦根市内の城跡や中世遺跡から出土した遺物の整理作業に携わったのがキッカケとなり、現在の専門分野についてより深く学ぶようになりました。学部4回生の頃、さらに専門分野についてさらに深く学びたいと考え、滋賀県立大学大学院に進むことを決めました。大学院受験に際しては、自分の研究内容を上手く説明できるよう面接対策を入念に行ないました。
大学院修了後は、学部・大学院の間に学んだことを生かして、地方自治体の埋蔵文化財専門職に就きたいと考えています。埋蔵専門職に就くためには、まず博物館学芸員の資格が必要となります。そのため学部生の頃から、資格を取るのに必要な博物館資料論、博物館経営論などの専門科目を履修し、4回生の時に滋賀県立安土城考古博物館にて博物館実習を行ないました。また学部生の頃から、考古学、発掘調査の知識・経験を得るため、自治体が行なっている発掘調査、大学の研究室が行なっている発掘調査に積極的に参加しました。
平成29年度から令和2年度にかけて、滋賀県立大学中井研究室と岐阜県可児市文化スポーツ部文化財課とが共同で行なった国史跡美濃金山城跡の発掘調査に参加しました。美濃金山城の天守があったと想定されている場所を中心に、これまで発掘調査の手が及んでいなかった部分の調査を行ない、美濃金山城主郭の構造と変遷について明らかにすることができました。現在は、発掘調査報告書の執筆を行なっているところで、令和2年度末に刊行予定です。
平成30年度から令和元年度にかけて、織豊期城郭研究会が主導して行なった織豊期城郭資料集成事業に携わりました。平成30年度は織豊期城郭で出土した瓦の基準資料の集成を行なっており、彦根城跡、佐和山城跡(滋賀県彦根市)を滋賀県立大学大学院の同輩である佐藤佑樹さんと共に担当しました。令和元年度は戦国・織豊期城郭石垣の基準資料の資料集成を行なっており、そのうち滋賀県、兵庫県、石川県の集成を熊本市熊本城調査研究センターの下高大輔さん、佐藤佑樹さん、滋賀県立大学学部生の松原草太さんと共に担当しました。その成果は、織豊期城郭研究会編2018『織豊期城郭瓦研究の新視点(織豊期城郭資料集成Ⅳ)』、織豊期城郭研究会編2019『戦国・織豊期城郭の石垣(織豊期城郭資料集成Ⅴ)』に反映されています。
令和元年度は、中井均先生が研究代表を務められた科研「戦国時代における石垣技術の考古学的研究」に参加し、下高大輔さん、佐藤佑樹さん、松原草太さんと共に、近江地方の戦国期城郭石垣の様相について検討を行ないました。その成果については、平成28~31年度学術研究助成基金助成金基盤研究(C)(一般)研究成果報告書に反映されており、滋賀県立大学で開催された令和元年9月の科研報告会にて発表を行ないました。