近世風俗画の一つである南蛮屏風は、様々な絵師によって描かれ、90点を超える作品が現存しています。しかしその制作には謎が多く、詳しいことはよく分かっていません。私は南蛮屏風に描かれる図様の表象の考察を通して、これらの絵が制作された背景を探っています。研究では、図様の描き方や画面構成について考察する際、南蛮屏風以外の絵画史料との比較だけでなく、文献史料を用いることで歴史的文脈を踏まえた解釈を実践しています。
私が日本美術史を学び始めたきっかけは学部一年生の時に受けた芸術学の講義です。講義の中で、歴史の教科書に「当時の人々の暮らしを描いた絵」として紹介されている絵巻や屏風等の絵は、客観的事実を表したものではないと知り衝撃を受けました。同時に、そうした絵は何を表すために描かれたのかを知りたいと思い美術史ゼミに入ました。学部卒業後は、すぐに院に進まず、学習塾に就職しました。そこで担当した生徒とのやり取りの中で、絵を解釈する楽しさを再認識し、絵の研究を再開するために大学院に進学しました。受験勉強の方法は、過去問演習を重視しました。特に院は、受験する研究科の過去問を実際に解き、出題傾向やその研究科が求める研究者像を分析することが大切です。
希望する進路は、博物館・美術館で働く学芸員です。学芸員の仕事は様々ですが、その中でも特に、展示普及活動を通じて、絵を解釈する楽しさを多くの人に伝えていきたいと考えています。研究を続ける中で、美術作品は見た目が美しくきれいなだけなく、その作品が作られた背景には様々なエピソードや考えがあることを学びました。その作品が誰によって・何のために作られたのかという背景を知り、そしてそれが絵としてどのように表現されているのかを解釈することは、文献に書かれた文字からは読み取れない歴史を知る方法の一つになると考えます。そうした絵の見方や楽しみ方を、展覧会やワークショップなどを通して発信し、絵に興味を持つきっかけをつくることに携わりたいと考えています。