本音や内面をあまり表に出さず「程よいつながり」を求める人は日本で増加する傾向にあります。その背景には、「SNS疲れ」や「キャラ疲れ」といった言葉に象徴されるような、「つながり過剰」からの脱却を志向する心理があると考えられます。
このような人間関係の変化は、社会学において、「自己の多元化」や「人間関係の選択化」といったキーワードのもとに論じられています。他方で、こうした変化はしばしば「人間関係の希薄化」として否定的に捉えられることもあります。
私は、友人関係の研究を視野に入れつつ、その中で見過ごされがちな「ポジティブな孤独(専門的には “solitude”)」について探究しています。関連する社会現象としては、「ソロ活」や「ソロキャンプ」、「二次創作」の流行が挙げられます(写真1・2)。また、最近は個人の本音や内面が表れる場として、「日記」や「独り言」にも注目しています。
私は幼少期から「目には見えないけれど、仕組みがあるもの」に惹かれます。たとえば、音楽や言語もその1つです。社会学でよくテーマにされる「人間関係」も例外ではありません。塾のアルバイト、教職課程の履修などをきっかけに卒業研究は「スクールカースト」をテーマにしました。そうして、青少年・若者の友人関係に関する研究に触れる中で、青年期に「当たり前」に存在した友人関係のあり方が、現代に特有のものであると、ひも解かれていく面白さを知りました。また、社会学は他分野と比較して、扱えるデータが膨大です。インタビュー調査や、統計的な手法も活用しながら、情報を整理して、「自分の手で世の中を見える化する」作業にやりがいを感じました(写真3)。就職や留学など色々と悩みもありましたが、もう少し研究を続けてみたいと感じ、大学院への進学を決めました。
大学院の修了後は、大学3回生からアルバイトを続けている株式会社りんご塾に就職します。幼児・小学生を対象に、算数やパズルのオリジナル教材の作成、そろばんや個別指導のお手伝いをさせてもらっています。実はパズルの問題を作ることは、「見えないロジックをどう形にするか」という点で、現在の研究を通じて鍛えられる思考とよく似ています。さらに、友人関係の研究から得た知見は、子どもとの接し方、特に言葉選びをする上で常に直結しています。卒業後も趣味として研究を続けながら、楽しくお仕事ができれば良いなと考えています。