セルフケアを目的としたキャラクターコンテンツの提案

藤森朱音

現代の日本では、人々のメンタルヘルスが悪化していることが指摘されている。また、特に20~25歳の若年期は、うつ病や不安症の好発年齢の一つと言われている。そこで、人々が精神的健康を保ちながら社会生活を送るためには、一人ひとりが日頃より自分自身のストレスに気づき、意識的に対処を行う「セルフケア」が必要であると考えた。

本研究では、主に若者をターゲットとして、人々が日常的にセルフケアを行う意識作りのためのコンテンツを制作することとし、セルフケアの手段の一つとして、「マインドフルネス」を提案する。「マインドフルネス」とは、「今この瞬間に注意を向けること」を意味し、仏教を源流としながらも今日では宗教性が取り払われており、さまざまな研究において効果が実証されている。しかし、その名前や内容や効果を知っている人は少なく、先行研究では「マインドフルネス」という言葉において「非科学的」「近寄りがたい」「怪しい」といった印象が持たれている可能性が示唆されている。そこで本研究では、ただ言葉の認知度を上げるだけではなく、親しみやすいと感じさせるコンテンツづくりを目指し、キャラクターを用いたアニメーション制作を行うこととした。キャラクターのデザインは、無表情を意識しており、受け手が自由にキャラクターの表情を解釈し、自らの感情を様々に投影できることをねらいとしている。また、無表情のキャラクターに合わせて、ナレーションにも無機質な声を用いた。

そして、制作したアニメーションを大学生19人に対して一定期間視聴・実践してもらう期間を設けた。その結果、キャラクターを用いることによる親近感や理解度の向上、コンテンツによるマインドフルネスの印象改善などの結果が示された。

本研究で行った制作が、メンタルヘルスが悪化している現代社会において、心の健康を保持しながら生き抜くための一助となることを期待している。