近代建築を補う建築の提案

吉川大空

1960年代から今日に至るまで、近代建築の課題に対する建築論が多く述べられてきた。しかし、都市や建築における画一化、均質化に対する負の側面が指摘され続けている。刻々と変化する社会で、約60年間、同一の課題が繰り返し指摘されている現状を見過ごしてはいけない。

そのような課題を解決するためには、今の取り組みに欠けている点や効果的な点を知る必要があると考えた。また、現在と過去の変化も考慮する必要がある。そこで、上記の内容を調査するために現在活躍している3Dデザイナー、トーマス・ヘザウィックを事例として取り上げ、ポスト・モダンのきっかけとなったロバート・ヴェンチューリを比較対象とした。

調査結果をもとに課題を解決するための現代の建築の在り方を考察した。かつての建築はモダンに対する革命的な建築論を有しており、それが意義深く、現実味のあるものであった。しかし、現在の建築は消耗品的な側面が強くなっているのではないか。一方、建築家は大量生産による早い建物のサイクルに飲み込まれているのではないか。だとしたら建築家は予算や機能以外に考える余裕がないのではないか、と考えた。

以上の事より、課題を解決するための現代の建築の在り方は、近代建築の力を認めながら、欠点を補う建築が良いのではないかと考えた。そうして個々の建築が補い合い、都市や世界がいつしか支え合う大きな1つの建物となることを期待している。