タブロイド紙の制作 ‒JR海⽥市-呉駅の沿線の町を対象として‒

芝尾未帆

現在の世の中ではネットで常に新しい情報が出ており、古い情報は埋もていく。ネットだけではなく、 町の光景も新しい建物が建てられたり整備されるたりすることで変化していくものであり、いつの間に かその新しい光景に⾒慣れていく。私の出⾝地である広島市でも現在広島駅のリニューアル⼯事や街の 中⼼部にサッカー専⽤スタジアムが建設中であったりなど、数年後にはそれらの周辺で新しい⼈の流れ や町の景⾊が⽣まれると予想される。また、現在はコロナの影響で海外はもちろん国内も様々な制限が あり、以前のように⾃由に移動しやすい状況ではない。しかしそんな中、⾝近な住まいの環境に注⽬が向 いており、コロナ禍の今は、⾝の回りにある町の環境やその魅⼒を改めて知るのにはとても良い機会で はないかと考えた。そこで、あまりにも⽇常すぎて⾒逃してしまっている居住地域や地元の魅⼒を再認 識でき、町と⼈の記憶を、最新の情報に埋もれていくSNSではなく、ものとして存在する紙媒体として 残していきたいと考え、これを本制作の⽬的とした。

そして、今回私が紙⾯で取り上げる地域は、私⾃⾝がある程度の⼟地勘がある⽅が制作も進めやすいとして、出⾝地である広島市周辺地域を検討した。そして、タブロイド紙のタイトルは、このタブロイド紙が「駅のある町の今」を残していくものであり、 ⾊んな地域や⼈を繋ぎ、待ち合わせの拠点にもなっている駅のように、この冊⼦を通して町の⼈が繋が っていくことを願い、「EKIMACHI」にした。紙⾯は全16 ページで、全ページを通して、イラストやレイアウトの仕⽅で統⼀感のある冊⼦を⽬指しながら、イラストでも⿊の輪郭線を描くか描かないでペー ジごとの印象を少しずつ変えている。地元の⽅へのインタビュー内容も紙⾯の8、9ページに取り上げている。

今回制作したタブロイド紙では「沿線の町」がキーワードだが、電⾞はただの移動⼿段ではなく、地域 ごとに異なる伝統⽂化や⽅⾔、⾷⽂化などが存在する⽇本において地域の⽂化を運び、交流を⽣んでい る存在だと感じる。しかし、過疎化などによって利⽤者が減っているローカル線では、廃線が検討されて いる路線も出てきている。実際に広島県の芸備線も沿線⼈⼝の低下や⾃動⾞交通の発達などから廃線の 危機に陥っています。もちろん路線の維持には⾦銭⾯的な問題などもあり、ローカル線の存続に関して は安易に考えられるものではない。このタブロイド紙は、ただ沿線の町の魅⼒を発信して路線の存在意 義を訴えるものではなく、将来的にローカル線がどのような形として存在していったとしても、このタ ブロイド紙が電⾞のように町と町をつなぎ、町で過ごしてきた⽣活の記憶、そして町や沿線⾵景の記録 を将来に繋げていくものとして残されていくことが最終的な本制作の意義だと考えている。