⽇本におけるCSR 広告の企画プロセスの提案

⼩幡悠⽮

CSR とは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の頭⽂字をとった略語訳である。CSR という⾔葉が指す意味は、論⽂によって異なるが、多くの場合「企業が社会的責任として社会貢献をし ていくことで、社会的存在価値の創造や競争⼒向上に結びつける⾏動 」といった意味で解釈されている。 強い社会的影響⼒を持つ企業が社会貢献をするという意味でCSR は、社会の持続可能な発展において重要 な要素の⼀つであると考えられている。特に、2015 年にSDGs(Sustainable Development Goals、持続 可能な開発⽬標)が掲げられてからは、SDGs の17 の⽬標を達成するため企業にCSR を求める傾向が 強くなっている。そんな背景もあり、現在では⼤企業を中⼼とした⼀部の企業がSDGs のための取り組 みという形で、CSR 活動を⾏なっている。また、CSR を取り⼊れることは、企業の経営活動においても 有益であることも、多く論じられてきた。このようなことから現在では、企業がCSR 活動に取り組む重要性への理解が、社会全体で⾼まってい る。しかし⼀⽅で、取り組む社会問題の選択やアウトプット⽅法などの企画段階のことについては、現 時点ではほとんど論じられていない。そのため、企画段階の理解が不⾜しており、SDGs 等の社会貢献 活動に取り組む企業は少ないという現状が報告されている。⼀般社団法⼈企業活⼒研究所が2017 年に 発表した『社会課題(SDGs 等)解決に向けた取り組みと国際機関・政府・産業界の連携のあり⽅に関 する調査研究報告書』の中では、「⽇本企業における SDGs に取り組む上での課題」の項⽬で、「社内 での展開⽅法が未確定(47.4%)」、「事業との関連性や社会的インパクトに関する分析評価がわから ない(37.2%)」等の回答が挙げられている。このことからも企画段階での理解不⾜が⼤きな課題とな っていることを読み取れる。 以上の現状から、CSR 広告の企画段階での理解不⾜が、CSR 普及の妨げの⼀因になっていると推測す ることができる。本研究では、その要因の解決がCSR の普及に繋がると仮定した上で、CSR 広告の企 画段階での理解不⾜解消を⽬的とした、現代の⽇本におけるCSR 広告の企画プロセスを考案し提案する。更に、考案したプロセスに基づいて企画したCSR 広告のアンケート調査を⾏い、どのような効果が あるかを検証する。

本研究では、古川裕也が定めたクリエイティブディレクションの⽅法論を参照し、CSR 広告の企画プ ロセスを考案した。 古川は、『すべての仕事はクリエイティブディレクションである。』で、クリエイティブディレクショ ンのプロセスを「ミッションの発見」→「コアアイデアの確定」→「ゴールイメージの設定」→「アウ ⽒名:⼩幡悠⽮ 研究タイトル:⽇本におけるCSR 広告の企画プロセスの提案 トプットのクオリティ管理」と定めている1。このプロセスは、一般のほとんどの広告に当てはまるもの であり、理にかなったプロセスであると考えられる。しかし、CSR 広告の場合は、一般の広告よりも強 く社会課題に注目する必要があるため、古川が定めたプロセスに「社会課題の選択」のプロセスを組み 込むことが重要であると筆者は考えた。また、古川の定めたプロセスは、全体的にクリエーティブディ レクターの目線で書かれたものであるため、企業向けに少し言葉を変更する必要があると考えた。 以上のことから、筆者はCSR 広告企画のための基本的なプロセスを、①「企業分析」→②「社会課題 の選択」→③「コアアイデア(解決方法)の決定」→④「アウトプット」と定めた。