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研究内容

公衆栄養学研究室では,どのような食事が健康維持や生活習慣病の発症予防にはよいのか、日本人を対象とした栄養疫学研究を行っています。また,滋賀県でおおむね5年毎に実施されている栄養調査の集計や解析業務,調査データを用いた研究も行っています。
現在,行っている研究テーマは下記の通りです。



高齢者のフレイルティと食事に関するコホート研究

地域在住コホートデータを用いた栄養疫学研究を行っています。そのなかでフレイルティをアウトカムとし栄養素摂取および食品群摂取との関連について検討しています。
研究成果;高齢者約3000名を対象に約7年間のコホート研究を実施,虚弱とたんぱく質摂取量と7年後の高次生活機能低下との関連を多変量ロジスティック回帰分析より検討しました。我々は,総たんぱく質および動物由来たんぱく質の高摂取は7年後の高次生活機能維持と予防的に関連していることを明らかにしました(Imai et al. Am Geriatr Soc. 2014)。

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貧血と栄養素摂取に関する研究

近年、フレイルティの関連要因として貧血が指摘されています(左下図)。我々はこの貧血と栄養素摂取との関連についての研究を行っています。
研究成果1;地域在住男性高齢者(4898人)において動物性たんぱく質をたくさん摂取することが貧血リスク低下と関連していることを明らかにしました(Imai et al. APJCN. 2019)
研究成果2;日本人高齢者を対象に食品群摂取量を主成分分析した結果,特徴づけられる食品群が米・漬物であるJapanese foodパターン,果物・緑黄色野菜であるHealthy foodパターン,畜肉・卵類であるProtein foodパターンの3つの食事パターンが抽出されました。Protein foodパターンのスコアが高い群では低い群に比べて貧血リスクは約2割減少(OR 0.80, 95%CI 0.66-0.98)しました。高齢者におけるたんぱく質を中心とした食事の摂取は貧血予防に有用であり,強いては将来のフレイル予防に有効である可能性を示唆しました。(Kito et al. JNSV 2019)

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滋賀県民における健康寿命延伸の要因を探る

我が国は世界有数の長寿国です。なかでも,近年,滋賀県における平均寿命の延伸は著しく延びています。我々は食を含む複数のライフスタイル関連要因を中心に滋賀県民栄養調査データを用いて,『滋賀県における寿命延伸の要因を明らかにする』ことを目的とした研究を行っています。
研究成果1;滋賀県の主要死因・性・市町別標準化死亡比(SMR)のデータは厚生労働省平成20−24年人口動態保健所・市区町村別統計より,健康行動スコアに関するデータは2015年度滋賀県民栄養調査より得た。県内19市町別の健康行動スコア平均値とSMRとの関連を重回帰分析により調べた。女性において,全がんSMRと健康行動スコアに負の関連が認められた(β = −0.968,p = 0.011)。全死因,その他の主要死因SMRと健康行動スコアは,男女ともに関連は認められなかった。女性において喫煙歴がない者(β = −0.780,p = 0.016)および食事の質が高い者(β = −0.703,p = 0.048)の割合が高いほど全がんSMRが低かった。(Tanaka et al. Nutrients 2020)
研究成果2;対象者は2015年度滋賀県民栄養調査に参加した20歳以上6,057人とした。5段階評価の自記式質問票を用い,対象者を主観的健康群(よい・まあよい)と主観的非健康群(ふつう・あまりよくない・よくない)に分類した。多変量ロジスティック回帰分析により健康行動スコア0点群に対する他群の主観的健康感不良の調整オッズ比を求めた。健康行動スコア0点群と比べて3点群(OR 0.59,95%CI 0.37−0.96),4点群(OR 0.40,95%CI 0.24−0.65),5点群(OR 0.33,95%CI 0.19−0.59)で主観的健康感不良リスクが低下した。特に運動と他の要因を組み合わせる者において主観的健康感不良リスクの低下が顕著であった。(Tanaka et al. BMC Public Health 2020)

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栄養素摂取量の国際比較

先進国では死因構造の中心が感染症から生活習慣病へ変わってきました。現在ではナトリウム・リンの過剰摂取による心血管疾患,肥満リスクの増加,カルシウムの摂取不足による骨折や高血圧発症など栄養素の過多や不足による疾病リスクの増加が社会問題となっています。
我が国の栄養素摂取量が先進国を中心とした世界各国と比較した研究は僅かです。当研究室では我が国における栄養素の摂取状況を明らかにすることを目的に諸外国データとの比較研究を行っています。




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