本研究室では、染着機構の解明とそれに裏付けられた新しい技法の展開により、染色の伝統と科学の谷間を埋め、さらに各種繊維に対する染色性を調べることにより、繊維・染料としての展開のみならず、他の分野への適用のための基礎データを得る事を目的として、現在研究を進めています。
- ■天然染料によるセルロース系繊維染色のシステム化
- 古来の染色方法は染料植物からの色素の抽出が煩雑であるうえに色素の利用効率が悪いこともあって高コストとなり、そのうえセルロース系繊維に対して濃色が得難い等の問題があります。これらの背景を打破して天然色素による染色を合成染料と同様なシステムで行い得るための基礎を確立する事を目的とした試みを行っています。
- ■各種藍草からの安定的かつ効果的な
インジゴ生成法の確立と残滓色素の有効利用
- 「藍」の製造方法は江戸時代を中心に行われていた伝統的方法が現在も用いられており、それらは天候等、自然の影響を受けやすいという問題点を有しています。本研究では伝統的な手法を現代の科学から検証し直し、効率的な生産方法と残滓色素の有効利用の検討を行っています。
- ■キチン/セルロース複合繊維の天然染料による染色
- 資源の枯渇化が叫ばれる中、地球上に残された数少ない巨大な未利用生物資源であるキチンを含む繊維として利用したキチン/セルロース複合繊維CR20(キチン20%、セルロース80%を含む)に対する天然染料の着色性を明らかにするための研究に取り組んでいます。
- ■古裂に用いられた天然染料の識別
- 現存する古裂には今なお鮮やかな色調を示しているものがあります。これらに用いられた染料を識別することにより、伝統的染色法による知見が得られ、さらに文化交流の解明にもつながります。