芹橋における回遊型お風呂の提案芹橋回湯風呂

石橋 優子

 芹橋地区を初めて訪れたとき、観光地として栄える夢京橋キャッスルロードの終点にあるにも関わらず、狭い路地を歩くとまるで別の地に来たかのように静かで、でも確かに人々の生活の音が近くで聞こえる空間に好意を持った。
それから芹橋について調査をしてみると、江戸時代に建てられた足軽屋敷が多く現存する貴重な地区であること、この地区特有のまち割りが今も残されていることなどを知った。

 芹橋地区は、歴史的に貴重な文化財を有している一方で、古い地元住民の閑静な住宅街の色が強いと言える。現状としては歩いて行ける範囲に平和堂や銀座街があるので、そこにお茶をしにいくなど、交流の場は芹橋の外になってしまっている。つまり芹橋地区は住民の「生活」拠点ではあるものの、人々が交流し、滞留するような「活きている」場はないと言える。私はこの現状を見直し、芹橋に「活きている場」を設計したいと考えた。