木材の良さ・現状を知ってもらうためのワークショップツールの提案―びわ湖材(滋賀県産材)を用いてー

日敷佳奈

 本研究は木材の良さ・現状を知ってもらうきっかけをつくり、木材の利用を促すことを目的とする。

 木工所や木工房の方へのインタビュー調査・事例調査から木材に触れる機会が少ないことに気づいた。そこで、木材に触れるきっかけとなるような気軽に体験できる場所を増やしたいと考えた。また、場所を選ばずにできる体験は比較的少ないが、体験する場自体が移動可能でどこでも開催できれば、機会の増加や参加難易度の低減に繋がると考えた。本研究では対象を滋賀県産材とした。滋賀県内の森林から合法性を確認して伐り出された原木およびその原木を加工した製材品のことをびわ湖材という。びわ湖材には様々なメリットと課題がある。それらについても知ってもらいたいと考えた。

 調査を踏まえて、びわ湖材を知ってもらうためのどこにでも移動可能なワークショップツールの制作を行った。検討を行った結果、場所の大きさや参加人数に合わせて自由自在に変形できる点と運搬のしやすさを考え、台形を採用した。制作物は全てびわ湖材を使用しており、台形とフレームは主にスギで制作したため軽量である。台形は8個で、高さは2種類である。低い方を高い方にはめ込むことができ、フレームにそれらを収納し運ぶことが可能である。電車、バス、車に乗ることができ、電車に持ち込めるように3辺の合計は2500㎜以内に収めている。組み方は八角形、平行四辺形、直線、L字、バラバラ、六角形など自由自在である。座ったり乗ったり、2つ重ねて机とすることもできる。ワークショップ名は「kito_ –びわこときと–」と名付けた。意味は"木と〇〇する"である。アンダーバーを付けることで、続きがあることを示している。このワークショップでは「木に触れる」「木を嗅ぐ」「木を知る」などの全て木と関わることを行う。ワークショップ名では基本的に自分が作りたいものを制作していただいた。思いつかない方のためにはメモスタンドやコースターなど実用的なものを提示した。台形のパターンや作り方説明書も見ていただきながら行った。使用場所はマルシェ、大学などの学校、福祉施設、公園、街中を想定している。運営は1人でも可能である。

 本制作を通して、ワークショップにより木材の良さ・現状を伝えることができた。参加者に体験していただけた、知っていただけただけで本制作の目的は果たされたと言える。子どもたちがある材料で何が作れるか真剣に考えたり、時間をかけて丁寧に削ってくださったりした参加者の姿が印象的であった。考えてもらうことで、身の回りにあるものを木で作れないか、どういった置き換えが可能か考えるきっかけになったと感じる。また、認知症カフェを営む方から「認知症カフェでびわ湖材のワークショップを行うのも良いですよね」とお聞きし、新たな場所の可能性を感じた。他にも、作業をしながら今まで話したことがなかった方同士での会話があり、この場を通して新たな繋がりが生まれることに気づいた。ワークショップツールが日頃認識されにくい木材・びわ湖材と人々を繋ぐきっかけになったと考えている。