本制作で注目したのは言葉の成長である。言葉の成長過程において子どもは言い間違いをする。子どもの言い間違いとは、とうもろこしを「とうもころし」というなど子どもが言語を習得していく中で発する間違った言葉のことを指す。
言い間違いについて考えていく中で、私自身の経験などから、子どもの言い間違いに対し直すべきか迷っている大人は少なくないということに気がついた。そうした子どもたちの言い間違いに関する悩みや現状に対して、より言葉の成長を楽しめることを目的としたコンテンツを制作することで、大人と子どもの時間に新たな価値を作ることができるのではないかと考えた。
言い間違いに関する調査などを行い、本制作では3つの目標を設定した。そして3つの目標を達成するため3つのアウトプットを提案する。
目標1: 言い間違いをよりポジティブに捉え子どもたちの話したいを応援すること
目標2: 言い間違いって治すべき?そんな不安に寄り添い接し方を提案すること
目標3: 言い間違いを記録し言葉の成長を残すこと
1つ目の制作物として子どもの言葉の成長を応援することをコンセプトに、言い間違いをモチーフにしたキャラクターを制作した。言い間違いをキャラクター化することで、間違いというネガティブな表現から離れ、言葉自体の魅力をよりいきいきと伝えられるのではないかと考えた。
また、キャラクターの総称を「つぼみーず」に決定した。言葉の成長を植物の成長に例えると言い間違いは正しい言葉を話せるようになる一歩手前、そんな言い間違いは花が開く前のつぼみのように感じられると考え、この名前をつけた。言い間違いをキャラクターにする上で特に重視した部分は子どもたちの言葉そのもののイメージを大切にすることである。例えば、テレビの言い間違いであるテベリでは「ベリ」という言葉に含まれる何かがはがれたような表現を取り入れた。
2つ目の制作物として、言い間違いへの接し方を伝える絵本を制作した。調査の結果から、言い間違いをしたとき否定的に笑われたり注意されたりすると、子どもに話すことに対してネガティブな感情が湧きやすいということがわかった。また、大人は子どもが言い間違いをしたときに直すべきかといった悩みを持つことが多い。そんな悩みを抱えた大人をターゲットに設定した。この絵本では、正しい育児を伝えたいという思いはなく、子どもと大人両方にとって楽しいと感じられる状況を作りたいと考えたので「言い間違いにはこう接するべきだ」というような断定的な表現は避けたいと考えた。そこで絵本の中に接し方の例を入れることで自然な形でメッセージを伝えた。
3つ目の制作物として、今もこれからも言葉の成長を楽しむことをコンセプトに言い間違いを記録するアプリを制作した。アプリを使用することで、言い間違いの記録を無理なく楽しく続けることができると考えた。
本制作では、子どもたちの言い間違いの魅力を深めるためさまざまな角度から調査し、制作を行った。制作を進めるにあたり、私自身も言い間違いについて、子どもたちの可愛い間違いという認識から奥深い成長プロセスへと見方が変わった。本制作を通じて、たくさんの人に子どもたちの言葉の成長を応援したいと思っていただければ嬉しい。