裁縫やリメイクに触れる機会を作る本の制作

加藤有華

 近年、安い衣服が簡単に購入でき、便利である一方で、衣服を大切に着続ける価値観が薄れていると感じている。幼少期に、リメイクをテーマとした児童書である、あんびるやすこの『なんでも魔女商会』を読んで裁縫やリメイクに興味を抱いた経験と、大学の授業でアパレル業界の環境問題について学び、実際に衣服を製作したことで、衣服を慎重に選び、大切に着続けようと消費意識が変化した経験から、物語を通して自主的な学びを促すことで、自分で考え、行動に移す力を与えられると考えた。
 近年の、値段の安さが重視される価値観からの脱却と、服を慎重に選び、大切に扱う習慣を身につけるために、裁縫やリメイクに触れる機会を作る本を制作することとした。

調査を踏まえて、制作物の狙いの実現には、家庭での裁縫への関わりづくり、衣服製作の経験づくり、リメイクの魅力の気づきの3つの視点が必要だと考え、計3冊の本を考案した。

 『すずらんのおまもり』は、家庭での裁縫への関わりをつくるために、幼稚園から小学校低学年の子どもとその親を対象とした絵本である。主人公の双子のアイとシンが両親から手作りのかばんと服をプレゼントしてもらい、愛情を感じるというストーリーの絵本の後ろに、絵本で登場した衣服の作り方が載っている。製作物として、ストーリーと関連し、すずらんをモチーフとしてバルーンシルエットを取り入れた。ほとんどが直線縫いでできる形で、かばん2種類と服4種類の計6種類とした。製作に挑戦しやすくするために、パーツごとに実寸大の型紙をつけた。
 『ちょうちょの道しるべ』は、衣服製作を経験することを目的とした児童書であり、家庭科の授業が始まる小学校高学年を対象とした。アイとシンがデザイナーのくるみさんと出会い、服を作る過程や服に込められた思いを学ぶストーリーである。製作する服は、材料が簡単に手に入ることが重要だと考え、100円均一で購入できる端切れを用いて、直線裁ち・手縫いで製作できる形とした。実際に、小学生を対象に、物語調の作り方を読んで製作を行ってもらったところ、長い直線を引くことが難しいことや、親しみのない裁縫用語に躓いてしまうという問題点が明らかになり、実寸大の型紙をつけ、より細やかな説明を加えた。
 『くるみさんのリメイクノート』は、リメイクの魅力に気づくきっかけをつくるために、同じく小学校高学年を対象とした児童書である。アパレル業界の環境問題について学び、自分たちにできることとしてリメイクを紹介するストーリーで、くるみさんがリメイク方法をまとめたノートという設定で紹介する。リメイクをする服が身近であること、興味を惹く変化であることが重要だと考え、ズボンとシャツを取り上げ、同じ服でもリメイク方法によって印象が大きく変わることを知ってもらうために、ズボンは2種類、シャツは5種類の方法を掲載した。

近年、安い服が手頃に手に入るようになっており、便利である反面、服一枚の価値が低くなっているように思う。家庭科の授業では、裁縫は基本的な技術しか習わず、製作はキットを用いて簡単な小物の製作のみであり、衣服を作る大変さを知る機会がない。この状況を変えるには、家庭での裁縫への関わり作りが必要となると考える。今回制作した本を通して衣服への価値観が変化し、消費意識が変化することを願う。