LIfe is Short

 私事になるが、新年になって悲しい知らせが舞い込んできた。大学時代の友人の一人が逝去したというのである。癌であったらしいが、私たち位の年齢からすればそう珍しいことではない。彼とは2年ほど前に電話で話したのが最後だった。お互いの無事を確かめ、近況を交換し、不景気をぼやきあって、最後には、まあ、機会があったらいっしょに酒でも飲もうや、といった会話だった。
 旧友たちのメールを通じてやってきた逝去の知らせに、まず思い浮かんだのは、大学時代、近所に下宿していた彼との交遊の光景。互いのアパートに夜中すぎでもかまわず訪れ合ったり、いっしょに飯を食いにいったり、銭湯に行ったりと、気ままな学生時代のうちのずいぶんと長い時間をいっしょに過ごした。その相手がもう今はこの世にいないのだと思うと胸がつまる。もう長いこと疎遠になっていたにもかかわらず。
 Life is Short。イギリス人がよく使うこの言葉が今の私の思いにぴったりする。人生は短い。近頃は日本人の平均寿命が長くなり、超高齢社会になったともいうが、それでもなお、人生は短い、という古人の言葉は人生のある真実を伝えていると思う。何十年も長く生きていても、悠久の時間の流れの中で人間の一生など短いものだ。ましてやその人の人生で本当に輝いている時間は短い。だから、その限られた時間を精一杯に生きていこう。自分の本当にやりたいことに集中して。Life is shortという言葉の中には、そういう思いが込められていると感じる。
 まだ若い学生諸君は気づいていないだろうが、君たちは、おそらく人生の中で最も輝かしい時間を生きているのかもしれない。もちろん、社会の中での自分の位置づけが見つけられないなど、若いからこその悩みや不安はあるだろう。最近は社会の中にリアリティが見いだせない若者が増えているとも聞く。しかし、そんな悩みや不安自体が、君たちが生き生きとした時間を生きようとしている証拠なのだ。しかも一緒に悩んでくれる、相談に乗ってくれる友人は、すぐそばに見つけることができる。同じ時間を生きているのは、やはり同年代の友人だから。
 Life is short。学生時代はさらに短い。だから学生という限られた時間を精一杯生きてほしい。

(合気道部機関誌「縁」平成21年春)