バイト全盛時代

最近の学生たちを見ていて、私が学生だった約30年前と最も違う点は、アルバイトである。昔もアルバイトはあった。しかし、それは毎日ではなく、せいぜい週に一日か二日、数時間づつくらいのことだった。バイトをまったくしない学生もたくさんいた。また学生がアルバイトできる働き先も少なく、たまのアルバイトで手に入る少額の給料でも、学生の私にはありがたかった。金はないが時間だけはたっぷりあった、のんびりした時代だった。

それが今は町中どこでもバイト先がある。定期的なバイトを持たない学生は、今や少数派だろう。大学とバイト先と家、この3点間を行き来するのが現代の学生の基本的ライフスタイルになった。この結果、30年前と比べて、学生生活は非常に忙しいものになってしまったのである。合気道部の活動もまた、この慢性的な忙しさのなかで行われていることと思う。(金はあんまり無くとも充分な時間があったほうが学生は幸せなのではないか、と私には思える。しかしこれは毎月きちんと給料がある身だから言えるのであって、学生諸君の実感とはかけ離れているに違いない。)

なぜ、こうなってしまったのだろう。その要因として、学生生活に金がかかるようになったということがある。学生に限らず、今は誰でも、何をするにも、金がかかる世の中なのかもしれない。また、社会が学生アルバイターを便利な労働力として必要としているという面もある。学生の就職難と近年のバイト全盛とは、実は深いところでつながっている。(もちろん、バイトには実社会の人生勉強という面もあり、それ自体やりがいもあるが、ここでは置いておく。)

こんな話が合気道部とどんなつながりがあるのか、不審に思うかもしれない。しかし、学生のサークル活動もまた、学生の自由になる金と時間の兼ね合いの中で成立していることは確かである。バイトも勉強もサークル活動も、そのような兼ね合いの中で、学生ひとりひとりが選択し、バランスをとっていくべきことである。合気道部の諸君には、合気道部員ならではのライフスタイルを期待したい。

(合気道部機関誌「縁」(えにし)のための原稿・改題)