人間としての出会い

合気道部の顧問を引き受けて5年あまりになる。その中でひとつ、部員諸君がうらやましい、と感じてきたことがある。

それは、合気道を通して、部員たちが普通の学生生活では得にくい、さまざまな人々との出会いを経験していることである。他学部の学生との出会いはもちろん、先輩、後輩、さらに他大学の学生、そして社会人、海外からの留学生、師範の方々などとの合気道部を通した出会いは、この種の部活動をしない学生たちにはとうてい経験できないことだろう。

これは大学における教員と学生との出会いとはずいぶん違う人間的な出会いだと思う。普通、大学においては卒業研究などのために1年以上のゼミを続けて、やっと到達できるような出会い、専門知識を教え・教わるだけの関係を超えた、人間同士の出会いなのではないだろうか。

ご存じのように、私自身は顧問でありながら合気道のことはまるで知らない。自分自身が合気道をしないかぎり、それは知る由もないのだが、合気道を通して部員諸君に以上のような多様な人々との、それも実に人間的な出会いが生まれていることは理解できる。しかも、この出会いは、大学時代のたかだか4年間にとどまらず、卒業以降も、いろいろな形で末永く続いていくものだろう。これはきっと部員たち、卒業生たちの大きな財産となってゆくにちがいない。

創部5周年を終えて、いま一度、大学における部活動の原点を思い直してみると、合気道部員の諸君が日々努力している理由が、以上のように少しは理解でき、またそのことを実にうらやましく思う。今後とも楽しい出会いの経験をたくさんつくっていただきたい。

(合気道部機関誌「縁」(えにし)のための原稿)