受験生へのメッセージ

私の大学受験はもう30年前のこと。今とは時代がまるで違うが、受験生の気持ちは共通しているだろう。受験の前夜、宿で参考書を眺めたりしながら、ひとつの言葉を噛みしめていた。多分、ヘミングウェイの言葉だったように思う。

それは「この世界は限りなく美しい所であり、そのために戦うに値する所なのだ」という言葉だった。ずいぶん勇ましい(時代がかった)言葉のように思うかもしれないが、受験ということのひとつの真実を伝えてもいる。受験は、たしかに競争だ。他の受験生より1点でも多く得点すればそれで良い結果になるのだから。しかし、それに向かうのは、他人を押しのけることに本当の目的があるのではなく、自分の人生の「戦い」のためなのだ。しかも戦うのはちっぽけな自分のためではなく、自分がそれを守り、つくり出すために献身したい「限りなく美しい世界」のためなのだ。今はただこの言葉を信じよう。もちろん受験に失敗することもある。それでも「美しい世界」も、そのための戦いも無くなるわけではないことを忘れずに。

(受験宿泊者用ガイド・原稿)