住居、建築、都市について学ぶことが私の生活と、人生の大きな部分でした。建築や都市を学ぶにはそれらを見なければなりません。そのために私は出来るだけ多くの場所を訪れるよう努力してきました。ヨーロッパでは、ギリシャに2年間住み、北欧やロシアにはまだ行っていませんが、多くの都市や町を訪ねております。ヨーロッパの他には、イスタンブール、カイロ、ルクソール、テヘラン、シラーズ、ペルセポリス、イスファハンなどの中東、それにインドでは、デリー、サンチー、ボパール、アグラ、アウーランガバード、エローラ、アジャンターなど、アメリカはボストンに5年半住んでいましたが、多くの場所は訪れていません。ボストンを中心とした東海岸の北部だけです。あとはメキシコではスペイン時代の植民都市と古代都市をいくつか見ました。東南アジア、中国、朝鮮半島、南アメリカ、オセアニアにはまだ行っていません。まだまだ行くべきところは多いのですが、多くを見ることによって大変勉強になり、私の研究の基礎となっています。これからも見ていないところを中心に旅行をして面白い種、考える種、研究の種を探していきたいと思っています。

 このような多くの住居・建築・都市・集落など(集住といっています)の観察から、それらは日本のものとは本質的に大きく異っていて、どこがどう違うか、そして、それは何故なのかという基本的な疑問を持ちましたが、これらの点については、今までは明快に説明されていません。以下の研究課題1に述べてあるテーマはこれらを明らかにすることが目的であり、ある程度の成果は得られたと考えています。これは日本文化の本質的な問題であり、日本における今後の集住の設計の基本原理になるべきであると思います。
 また私は自分を本質的に設計者であると思っています。その立場から、これからの日本の集住をどのように設計していくべきかを考えるのが以下の研究課題2です。現在は地球環境問題の激化、超高齢社会の到来、情報社会化、低成長経済などから既存の集住を大きく変えねばならない時代に入ってきています。設計活動や設計課題などを通じて学生との共同作業によって、また町づくりの提案やその活動に参加することによって考えていくことになります。

今一番関心のある事は、自分の研究成果(研究課題1にある)を出版することと、2005年に世界エキスティックス学会(World Society for Ekistics) の世界大会を滋賀県立大学において開催することの2つ。そのための準備をいろいろと始めています。

●学生に望むこと
同じ授業でも、学ぶ姿勢によって自分の血となり肉となる質と量が全く異なります。積極的に勉強するのと、受動的にするのとでは大きく異なります。「自分で育つ大学」というこの大学のモットーの意味でもあります。そのためには興味のもてる分野を早く見つけてください。いろんな分野に挑戦することも必要ですが。


●職  名 教授
●学  歴 京都大学工学部建築学科卒業(1959年3月)
京都大学工学研究科修士課程終了(1961年3月)
 この他
アテネ・エキスティックス研究所(C.A.ドキシアディス主宰)(1965年9月〜67年7月)
エキスティックス大学院に国より公務出張を命じられる。
マサチュウセッツ工科大学(M.I.T.)都市研究・都市計画学部大学院(指導教官 K.リンチ)
 (1967年9月〜72年12月)にて研究・研修
●学  位 京都大学博士(工学:1994年7月)
●資  格 一級建築士
●職  歴

明石工業高等専門学校建築学科教授(1977年〜94年)
京都大学教養部講師(非常勤)(1973年〜91年)
設計事務所ゲンプラン(1973年〜76年)
京都大学工学部助手(1961年〜67年)
 この他、1965年より1972の間に、アテネ及び、ボストンにおいて研究、
 研修中の夏休みなどの期間中において
ドキシアディス・アソシエイツ Doxiadis Associates(アテネ)
ササキ・ドウソン・デゥメイ・アソシエイツ Sasaki Dawson Demay Associates(ボストン)
ウオレス・フロイド・エレンツヴァイク・アソシエイツ Wallace Floyd Ellenzweik Associates(ボストン)
ボストン市再開発公社都市デザイン部門 Boston Redevelopment Authority
 にて設計・計画・研究に従事

 

●専門分野 建築意匠、都市デザイン、住居学
●担当科目 生活環境論、住空間デザインII、III、住居設計演習、〈院〉住空間デザイン特論など
Japanese Culture and Civilization(ミシガン州立大学日本校の講義として英語による外国人学生向け講義−共同担当)

研究課題と業績  WORKS

●研究課題1








        ◆

日本の集住の場所の空間構造の特性についての研究
人は住居、村や町、地域、都市、地方などいろいろのレベルで集まって住んでいます。
私の第一の研究テーマは、日本でのこのような集住の場所の空間構造の特徴を明ら
かにすることです。伝統的な日本の住まう空間は、他の文明・文化のものと大きく異な
っています。しかし従来、そのことが正確に認識されてきたとはいえません。私はどこが、
どのように、なぜ異なるかを明らかにしようとしてきましたし、これからの研究テーマでもあ
ります。以下のものは集落についての研究が中心ではありますが、研究対象は住居か
ら地域のレベルに至っています。現在、成果をまとめ出版を準備中です。

研究課題1に関係する業績のうち、すでに出版あるいは公開された主要なものは
 1 『長浜市史』第7巻 地域文化財編
   第一章、第二節「歴史的自然景観の変貌」および第三章、
   第五節「北郷里の地域文化財」2003年3月発刊

 2 「緑の閉合性−日本における伝統的な集住の場所の空間構造の特性 その1−」
   日本建築学会計画系論文集 第537号、2000年11月

 3 「集住の場所の〈中心〉の空間構造−日本文化での空間認識の特性について−」1997年
   前川道郎 編 『建築的場所論の研究』 中央公論美術出版 内

 4 「日本における伝統的な集住の空間構造に関する研究」
   京都大学工学研究科への学位論文1994年

 5 「メキシコの歴史的遺産−スペイン植民都市とスペイン時代以前の遺跡」
   日本イコモス国内委員会 
   雑誌『JAPAN ICOMOS INFORMATION』 第4期、第9号 2000年2月

 6 『歴史の町なみ』中国・四国・九州・沖縄編 NHKブックス 共著(西川幸治他と)1987年6月

 7 『歴史の町なみ』近畿編 NHKブックス 共著(西川幸治他と) 1982年6月

 8 「脇の町並み」  『図説 日本の町並み 10 四国編』の内 第一法規出版 1982年6月

 9 『佐伯 歴史文化環境整備計画のための調査報告書』 佐伯市 1982年3月

10 「歴史のみち−榛原・大宇陀保存整備計画」 雑誌『環境文化』 No.45
   特集 歴史の道 河内古道と伊勢みち 共著 1981年6月

11 「番条と若槻」 下ッ道と環濠集落 雑誌『環境文化』 No.45
   特集 歴史の道 河内古道と伊勢みち 共著 1981年6月

12 「集住の空間的構造−環濠集落〈番条〉の場合」
   『明石高専研究紀要』No.23 共著(渡辺宏と)1981年1月

13 「脇の地域文化財」『都市化にともなう地域文化財の保存と活用に関する調査と研究』
   トヨタ財団助成研究報告書III-003 共著 1979年9月

 

●研究課題2





        ◆

現代の集住の場所は日本においてどうあるべきだろうか。近代という時代が転換期に入り、
地球環境問題、超高齢社会、情報社会化などの大問題群による激変期を迎え、住居を
はじめ、町や集落、都市、国土にわたる集住の場所は今後どのような形になるべきだろうか。
どのような生活が待ち受け、それを実現する集住の場所のデザインはどうあるべきであろうか。
このような大きな問題意識をもって集住地の諸問題を考えています。

研究課題2に関係する業績について、すでに出版あるいは公開されて主要な成果は
 1 「What is the success of a historical local city, Hikone, in Japan in the 21stcentury?」
   "Ekistics" vol.67, no.397, 2003年出版予定
   2001年ベルリンにおける世界エキスティックス(人間居住の科学)学会において
   講演した内容を発展させ掲載したもの

 2 「彦根の町づくりと都市デザインへの提案」
   滋賀県立大学 人間文化学部 研究報告 『人間文化』 2001年1月号

 3 「Megalopolis in Japan」 雑誌 "Ekistics" vol.33, no.199 1972年6月

 4 「Japan Megalopolis Another Approach」 雑誌 "Ekistics" vol.26, no.152 1968年7月

 5 「New Community Planning−A Systematic Approach to
   the New Community Planning Process」
   Urban Systems Laboratory, M.I.T. 1969年 共著

 6 「Natural Environment : A Supplementary Report to
    "Planning for New Community : A Systematic Approach"」
   Urban Systems Laboratory, M.I.T. 1969年 単著

 7 『都市の基本的構造』 京都大学工学部 修士論文 共著(滝光夫と) 1961年3月

 

●研究業績3 

        ◆

 

以上二つの研究課題の他、文化、保存修景、教育などに関するもの

 1 「Japanese Concept of Culture」
   2003年10月 ギリシャ・ティノス島での世界エキスティックス会議での口頭発表
   雑誌 "Ekisitics" に掲載の予定。

 2 「Project Proposal for Conservation of
   the Buddhist Monuments at Sanchi and Satd-hara」
   UNESCO 1993年6月 共著(西川幸治、山本忠尚と)

   インドのサンチーとサッダーラにあるストゥーパ、僧院、アプサイダル・テンプルからなる
   仏教遺跡の発掘、修復保存のための現地調査を行い、作業範囲と方法を提案
   したもの。日本政府のユネスコを通じての援助により可能となり、筆者等は定期的
   にインド考古局による作業を現地にて点検し、その結果を三次にわたって報告した。

   「Evaluation Report for the Japan Trust Fund Project of Buddhist Monuments
   at San- chi and Satdhara」
   UNESCO 1995年3月, 1996年3月, 1999年3月

 3 「建築学科の教育方法改善に関する調査および分析」
   雑誌『高専教育』特集号:21世紀に向けての高専教育 1992年5月 共著

   高等教育の変動期にあたって、これからの高専教育を考える国立高等専門学校
   協会(国専協)において教育方法改善プロジェクトが発足し、土木建築系部会の
   建築系幹事としてアンケート調査、分析を行い、さらに考察を行っている。

 


作品紹介  DESIGN WORKS

●設計業績
(主要なもの)

 建築や住居についての設計教育をする教員は、研究をする他、設計の実務をすることが
 必要であると思います。私自身は本来的に設計者であると思っていますが、教師になって
 からは実務が多くは出 来ていないのが残念です。以下に主要な仕事をあげます。

 1 林 邸 滋賀県高島郡高島町鴨(2002年3月竣工)
   田園の中の集落に建つ住宅。現代の民家を目指す。周囲の景観に融け込み、融通性の
   ある一般的な平面を設計。国産材の吉野杉を用い、パッシヴ・ソーラーシステムである
   OM ソーラーシステムを採用し、省エネルギーと開放的な平面を実現。人工化学物質素材
   の最少な完全な健康住宅をも目指す。

 2 竹田邸 大阪市平野区流町四丁目(1988年11月竣工)
   大阪の市街地の住宅街に建つ。開業医の質の高い住宅。高密な市街地で周囲からの
   隔離性が高く、同時に庭に自然の豊かな独立住宅の原型を目指して設計。

 3 神慈秀明会滋賀の御苑 全体計画および景観計画、信楽町(1973年〜78年設計)
   宗教法人神慈秀明会の神域を信楽町田代の山中約30万坪の敷地に計画・設計を行う。
   後に神殿はミノル・ヤマサキ、カリオン塔は I.M.ペイ、神事棟は吉村順三によって設計。

 4 鈴木自動車工業本館 浜松市(1964年8月竣工)−雑誌『新建築』 昭和40年4月号掲載

 5 鳴門市立工業高校計画案−雑誌『建築と社会』 昭和40年7月号に紹介

 6 京都府立高校計画案− 同上

 7 尾道市公会堂(昭和38年3月竣工) 雑誌『建築と社会』 昭和38年6月号に掲載

 8 京都大学工学部配置計画および土木総合館など

 9 須磨女子学園総合配置計画および高校棟  神戸市 (昭和35年8月竣工)
   雑誌『建築と社会』昭和37年7月号、及びスイスの建築雑誌 "Werk" 1962年4月号 に掲載

 10 大阪芸術大学 設計競技応募案

 ◇4〜9については京都大学工学部建築学科において増田友也教授の下においてチーフとして
  設計担当したもの。また外国滞在中に担当した設計活動および参加した競技設計は

 11 ハワイ、カウワイ島でのリゾート開発
   (1971年6月設計 Sasaki Dawson Demay Assoc.において)
   ゴルフ場とホテル、別荘地と一体となったリゾート地開発。

 12 アラスカ、ノーススロープに建つ BP Alaska の従業員キャンプ
    (1970年9月設計 Wallace Floyd Ellenzweik Assoc.において)

   極寒の地で永久凍土の上に石油採掘のための従業員キャンプの設計。
   アメリカ本土で四つに分けて建設し、それぞれをバージに乗せて現地に運び、
   杭の上に乗せる設計。

 13 アメリカ建国200年祭 EXPOボストン計画案(1968年 Boston Redevelopment Authority)
   建国祭への基本計画を検討。鉄骨パイプ構造による巨大な大構造の単位を敷地に
   合せて配置し、各大構造の中に必要に応じて小構造をはめこんで展示空間を作る案。
   テントも多用して祝祭的な空間を作っている。

 14 ヨーロッパ共同体鉄鋼連盟 工業化住宅競技設計応募案(1941年9月 Etienne Dusard と)
   ベルギーで出版された Cahiers d'architecture Tournai 1、1967年2月 に紹介される。
   アテネ滞在中にベルギーの建築家と共同で提出したもの。鉄パイプのフレームに各種の
   住居ユニットが吊り下げられ、どのような規模の構成にもなり得るという先端的なもの。

 15 パキスタン、リヤルプール農科大学オーディトリウム案(1965年12月設計 Doxiadis Assoc.)
   建築資材などが十分ではなく、空調などの電気エネルギーや技術が十分でない
   途上国でのオーディトリウムの設計がテーマである。

 



●所属学会・
  役職

日本建築学会(評議員91、92年度、常議員89、90年度)
日本建築家協会
日本イコモス国内委員会
World Society for Ekistics(Executive Council Member)

●地域貢献・
  活動

平成8年5月 大津市建築審査会委員(〜平成14年3月)
平成10年7月 〈しがぎん〉ニュービジネスフォーラム住宅・生活文化分科会座長(〜平成12年3月)
平成10年12月 彦根市都市景観アドヴァイザー(〜現在)
平成11年3月 長浜市史第7巻「地域文化財編」執筆者(〜平成15年3月)
平成11年6月 財団法人日本ナショナルトラスト平成11年度観光資源保護調査
          「彦根城下町の歴史的景観の調査と保存修景」調査委員
平成13年12月 ユニヴァーサルデザイン歩行空間ネットワーク構想検討懇話会委員・副座長
平成14年6月 ユニヴァーサルデザインのまちづくり研究会・理事長(〜現在)
平成14年8月 彦根市交通バリアーフリー基本構想策定協議会・会長(〜平成15年3月)
平成15年4月 野洲町交通バリアーフリー基本構想策定委員会・会長(〜現在)