県大ミニ博物館 過去に実施した展示の紹介

すごしっこ (2000)
展示企画者 上原 勇介(環境科学部)




1.展示の概説

 
「すごしっこ」とは僕が勝手ながらに考えた言葉です。詳しくは、滋賀県彦根市須越町で遊ぶ子どもたちのことです。地域の中で存分に遊ぶ彼らとの付き合いは既に長いものとなっています。いつもふらっと現れて一緒に遊んで写真を撮って、と。

 「もしかしたら僕は変なおじさんと思われてるかもしれない」、「僕の片思いなのかもしれない」。やはり20を越えた大人が子どもと一緒になって遊んでる姿ははた目から見たらおかしなものですから、いつも撮りに行く前はそんなことを考えたりします。でもいざ行ってみると、やさしく迎えてくれたりもするので安心もします。通うということは、そういう気持ちの繰り返しです。
 これからもそういう気持ちを繰り返して、僕は須越に通うのだと思います。放課後、天気だったりすると、ただただ「行きたい」、「会いたい」という衝動がなぜかいつも僕を後押しするのです。「すごしっこ」たちには確かにそういう魅力があります。

 「今、子供が危ない」という言葉をよく耳にします。しかし何をもって子供が危ないと言っているのでしょうか。僕たちも少し前は子供だった。誰だって子供だった時があります。その時はどうだったですか?あなたにとって、僕らにとって、その時はとても自由な時間を過ごし、それは、かけがえのない思い出のはずです。その時は、誰だって好きなことをして生きてられた。その時は、とても自主的で創造性が発揮できたはずで遊びだけに熱中し、ひとつの遊びに飽きればほかの夢中になれるようなものに絶えず移っていく。そして遊びは多様になる。たくさんの、親には内緒の秘密の場所や秘密の出来事。明日が来ることの不安なんて微塵も無い。毎日が新しい。全存在が遊びのためにあるようなそんな時期。  

 この展示では、今を生きる、とても身近なはずの子供たちの生活を写真に写したものです。なにも特別なものはありません。ただ本当に普通に好奇心に応じて生きている子供たちだと思います。

 僕は思います。その姿を見るお父さんお母さん方が、または同世代の子供たちが本来あるべき「子ども」の姿について、考え、それぞれの答えをなんとなくもってもらえれば幸いなのです。





2.写真のできるまで

 
ともかく一緒にいました。彼らが小学校から帰ってくる時間4時ごろから、日が暮れるまで。一緒に遊び、彼らの姿を記録する。今年で4年目になりますが、この展示で出品するものはその中での最初の2年間に撮ったものをまとめたものです。

 よく「カラ−では撮らないんですか?」と聞かれることがあります。それはつまり、「白黒でしか表現できないんですか?」と聞いているようにも思うのです。写真を白黒写真にこだわって撮るのは、モノクロフィルムだと自分で現像できるということもあります。確かにお金の面での心配が少し減ります。しかし、それ以上に僕が白黒にこだわる理由は、白と黒だけで表される世界の特性を考えた上でのことです。色の世界に惑わされることなく人の表情や地域の雰囲気を表せることができると考えるからです。またモノクロの世界は人に過去の感情を呼び起こす魔法を持っています。懐かしさとともに、未来へもつながるノスタルジックさを有していると思うのです。それは決して「今」を写すだけのカラーには無いものです。


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