県大ミニ博物館 過去に実施した展示の紹介

おじいちゃんの趣味の世界  (1998年度)
展示企画者 小森 雅美 (人間文化学部)


1.展示の趣旨

 
私の死んでしまった祖父は、何でもコレクションしてしまうすごい人だった。切手、ホテルのコースター、たばこのケース、スタンプ、テレホンカード等々。とにかく半端ではない。その影響もあってか私も小学二年の頃に切手集めに凝っていた。現在、祖父のコレクションしていた切手は、そのほとんどが父の手元にある。
 この課題のことを考えたとき、ふとこの切手類のことを思い出した。確か前に見たときに戦争中の物があったことを記憶しているので、もう一度引っぱり出してみた。すると結構珍しい切手が、未使用で保存されていたり、今では高価な切手などがかなり残っているではないか。まだ整理されていない物もかなりある。これを機に、少し整理して、年代別や発行別に並べてみたいと思った。
 このまま埋もれさせてしまうには、もったいないような気がする。展示することで少しはおじいちゃんのコレクションにも意義が出てくるのではないだろうか。また戦争中の切手などは、あまり他の人も目にする機会がないだろう。そう思い今回の展示に決定した。






2.展示内容
ク展示品の一覧

1.支那事変第4周年記念絵葉書(昭和16年・陸軍恤兵部) 1
2.検閲済み 軍事郵便(?・?)1
3.陸軍用封筒(?・?)1
4.満州帝国の葉書(?・満州帝国郵政)1
5.駆逐艦ナツグモ浸水記念葉書(昭和12年・佐世保海軍工場)1
6.軍艦飛竜浸水記念絵葉書(昭和12年・横須賀海軍工場)1
7.切手シート?南京での購入品(購入日:昭和18年)1
8.明治・大正の切手(明治、大正・大日本帝国郵便)20
9.昭和初期・戦時中の切手(昭和20年まで・大日本帝国郵便)20
10.昭和初期・戦後の切手(昭和20年から・日本郵便)20
11.占領国切手(占領中・大日本帝国郵便)10
12.大型切手シート(戦時中・大日本帝国郵便)1


3.戦時中の切手について

 戦時中の切手は見ても判るように戦争を助長するデザインの物が多い。敗戦間近には灰白紙や粗紙を使い、目打ちや糊のない物が出回った。
 戦時中の変わった切手として郵便貯金切手という物がある。少額貯金を奨励するために、切手による貯金ができるという台紙である。16年に発行されたにもかかわらず、戦争のために、人手や資材が不足し昭和18年に発行中止となった。
 また、面白いエピソードとして「敵国降伏」の切手がある。この切手は敗戦色が濃くなってきた日本に神風が吹くようにと願って作られた。しかしデザインの変更や工場が空襲に遭うなどして、完成直後に敗戦を迎えた。しかし、アメリカ兵は日本が敵に降伏した記念の物だ、と思い祖国への土産として買っていたという。
 また、戦中の切手には菊花紋章がついていたが、戦後は連合軍に郵便切手は皇室財産ではないと指摘を受け消えてしまった。


4.占領国の切手について
 日本は戦争中に次々と占領国を作っていったわけだが、その占領国で作られた切手がある。1932年には、日本は満州国における政権を作り上げた。郵政業務はそれまでの中華郵政を接収したが、その年の7月26日から「満州国郵政」の表示が使われるようになった。1945年の日本の敗戦と共にその切手の使用も終わった。そのほかにも、ビルマ、ジャワ、スマトラ、マライ、フィリピン、北ボルネオ、香港などの切手もある。
 祖父は満州に薬剤大尉として赴いていたため、満州以外の切手はほとんど所有していなかった。そのため今回の展示は、南の占領国の切手は含まれていない。


5.参考文献一覧
「奇妙な書簡」柘植久慶 (並木書房)
「切手おもしろ百科」平岩道夫、平岩雅代 (けいせい出版)
「さくら日本切手カタログ」財団法人日本郵趣協会


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