県大ミニ博物館 過去に実施した展示の紹介

七色草木染 (2000 年度)
展示企画者 
佐竹 絵理 (環境科学部)
1.展示の趣旨

 私は趣味で草木染めをしていますが、実は身の周りにある植物で十分楽しむことが出来るのです。そこで、草木染めを身近に感じてもらうため、なるべく県大とその周辺に見られる植物を例にとって紹介することにしました。 また、草木染めというと地味な色のイメージが強いようなので、七色とまではいきませんが、いろいろな色を集めてみました。今回は色に重点を置いているので、展示は植物の紹介を中心にし、染色法は一番手軽なウールだけを取り上げることにしました。


2.展示品の一覧

No.1 染料である植物(キンモクセイ)
No.2 白色の毛糸(ウール100%)1束
No.3 染めた毛糸(ウール100%)1束
No.4 染めた毛(キンモクセイ)数グラム
No.5  〃  (ヨモギ)

3.展示パネル

○パネル1
ウールの染色法(図解)

○パネル2
はじめに 
 草木染めをするようになって、色という観点から植物を見るようになりました。今回は県大周辺で見られる植物を中心に、その色の世界を紹介したいと思います。特に学内に生えている植物に関しては、★印をつけてあるので参考にしてください。


植物染料の歴史
 世界のどの国でも、19世紀中頃に合成染料が作られるまで、天然染料によって染色を行っていた。人々が最初に色を用いた目的は、病気や悪霊から身を守る一種のまじないだったと言われている。
 日本には遣唐使などによって中国から数々の染色植物と高度な染色技術が持ち帰られ、植物染料が広く用いられるようになった。だが、明治時代に入り合成染料が入ってくるとその使用は減り、大正時代には黄八丈や藍染めなどを残すのみとなった。その後、再び植物染料の良さが見直され、今日に至っている。

植物染料の特徴
 科学染料とは違い、いつも同じ色が出るわけではない。採集する季節や場所、染める温度や時間など様々な要因が重なって一つの色になる。思い通りに行かないからこそ、意外な植物から鮮やかな色が出たときの驚きは大きい。

繊維の性質
 主な被染料(染める材料)のウールと絹は動物繊維で、木綿と麻は植物繊維である。ウールは急激な温度変化でフェルト化し、アルカリに弱いが、染めやすく色が落ちにくい。絹は低温染めができ、しなやかで光沢がある。逆に、木綿や麻はアルカリに強く酸に弱いので、藍染めに適している。

媒染とは
 植物染料の多くは、それだけでは完全に発色することはできない。このような染料は媒染剤であるミョウバン、鉄、銅、錫、などの溶液で煮ることによって、はじめて色素が固定し発色する。 また、使う媒染剤を変えることで、同じ植物染料でも発色が違ってくる。だいたい使う量は、被染物の重さの数%〜15%である。

媒染の方法
 媒染剤に被染物の重さの30〜50倍の水を加えて溶かす。そこに被染物を入れて数10分煮る。軽く脱水し、ぬるま湯で2〜3回洗う。その後、染液に戻して60℃に温めてから火を止め、冷めるまで待つ。媒染には先媒染と後媒染があり、ミョウバン以外はたいてい後媒染である。

○パネル3・赤色
スモモ(バラ科)
高さ4〜10mになる中国原産の落葉樹。葉は先がとがり、ふちには細かいきょ歯がある。春に2cmの白い花が咲き、 6〜7月に黄色から赤紫色の実が熟す。材100%の無媒染で染まる。
その他…アカネ(根100%、ミョウバン媒染)

○パネル4・オレンジ色
ソヨゴ(モチノキ科)
10mほどになる常緑樹。葉は互生し、濃緑で光沢がある。花は6月に咲き、雌雄異株。赤い直系7mmほどの丸い実がなる。樹皮、葉にはタンニンが含まれている。生葉200%のミョウバン媒染で染まる。
その他…ウメ(材200%、ミョウバン媒染)

○パネル5・黄色
★キンモクセイ(モクセイ科)
鑑賞用の庭木として知られている常緑樹。樹皮は灰白色.長楕円形の4〜10cmの堅い葉を密につける。9〜10月に多数のオレンジ色の小花が咲き、強い芳香がする。生葉200%のミョウバン媒染で染まる。
その他…★ハナズオウ(生葉100%、錫媒染)

★エンジュ(花蕾or豆実50%、ミョウバン媒染)

○パネル6・黄緑色
★タンポポ(キク科)
深い切れ込みのある葉を円座上に広げ、葉の間から茎を伸ばしてその先に黄色または白の頭花を開く。セイヨウタンポポは在来種と同様に発色する。生葉400% の銅媒染で染まる。
その他…キョウチクトウ(生葉200%、銅媒染)

○パネル7・緑色
★ヨモギ(キク科)
多年草。草丈50~100cmになり、茎はよく分枝する。葉は互生し、楕円形で羽根状に深裂する。裏面は綿毛が密生していて、灰白色になっている。秋には多数の頭花が円錐花序につく。生葉100%の銅媒染で染まる。

その他…★ケヤキ(材200%、銅媒染)

○パネル8・青色
ヤマアイ(トウダイグサ科)
山の木陰に生える多年草。草丈は25〜50cmで、葉は1.5~3cmの葉柄があり、粗毛がまばらに生える。春に穂状の小さな緑色の花が咲く。生葉200%の無媒染で染まる。
その他…クサギ(実200%、無媒染)

○パネル9・灰色
★タブノキ(クスノキ科)
常緑高木樹。樹皮は灰褐色で厚く、浅く割れる。葉は互生し、皮質。緑色で裏面は淡緑色。先端は急にすぼまってとがり、基部はくさび型で、長さは10~15cm。 5月に緑黄色の小花。生葉100%の鉄媒染で染まる。
その他…★サクラ(生葉100%、鉄媒染) ヤブツバキ(生葉100%、鉄媒染)

3.参考文献
「ウールの植物染料」寺村祐子 1993年 文化出版局
「続・ウールの植物染料」寺村祐子 1998年 文化出版局
「原色日本植物図鑑・草本編?」北村四郎・ 村田源 1981年 保育社
「草木染めを楽しむ」林泣童 1997年 株式会社ヴォーグ社


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