県大ミニ博物館 過去に実施した展示の紹介

BATIK・東洋の華布 〜染色から覗いたインドネシア文化〜 (2000年度)
展示企画者 永坂 朋子(人間文化学部)
1.展示の趣旨
 「染色」は世界各地で行われています。しかし、その技法や染色物の模様、色あいなどは地域によって千差万別です。技法や模様の違いはすなわち文化の違いでもあります。
 今回の展示では、特にインドネシアの代表的な染色物であるBATIK(バティック)を取り上げてみました。展示を通して、インドネシア文化を染色という側面から覗いていただければ幸いです。

2.展示内容
(1)バティックの布
 インドネシアで生産されるろうけつ染めの布。あざやかな色彩や花鳥模様が、いかにも南国のものらしい。

(2)チャンティン
 手書きのろう引きに使われる道具。銅製のろうだめに溶かしたろうを入れ、細管を流れ出るろうによってろう引きをする。

(3)チャップ
 大量生産を目的として作られた押型。模様面にろうをつけ、布にろう置きをする。銅板によって複雑な模様が作られている。

(4)ブロック
 インドでの型押し染めに使われる木版。インドの染色技法との比較のため展示をした。

(5)バティックを利用したコースター

(6)バティックのはぎれ

3.解説パネル
(1)バティックとは
 バティックとはインドネシアで生産されるろうけつ染めのことである。バティックはその90%以上がジャワ島で生産されており、日本においては「ジャワ更紗」という別名の方が名高い。
 バティックは主に正装の際の腰巻き布として使われる。今日では服装の洋風化に伴い、伝統的な衣装は衰退しているが、それでも祭儀において正装が不可欠とされている。

(2)バティックの歴史
 バティックは11世紀から12世紀の間に始まったといわれ、14世紀半ばにはすでに隆盛していた。そしてその技法はインドより伝わったと考えられている。
 バティックに関する最も古い文献は、14世紀半ばの元の汪元淵が記した『島夷誌略』であり、「極細堅耐色印布」や「花印布」の記述がみられ、共にバティックを指していると考えられる。

(3)インドネシアとは
 インドネシアは人口約1億5千万人、総面積192万平方キロメートル、大小13000以上の島々からなり、公用語はインドネシア語。
 通貨の単位はルピア(1円=75ルピア:1999年当時)。人口の90%はイスラム教徒である。

(4)インド更紗との比較
 「ろうけつ染め」の技法は、インドからインドネシアに伝わったといわれている。
 インド更紗には木版に直接染料をつけて捺印する「ブロックプリント」と呼ばれる方法と、カラムペンを使って、ろう置きをし、色差しをする「カラムカリ」という方法がある。

4.参考文献
「BATIK」富田博司 (京都書院)
「図解 染織技術事典」田中清香 土肥悦子 (理工学社)
「インド 染織の旅」安藤武子 (源流社)
「インドネシア染色体系 上」吉本忍 (紫紅者)
「岡田コレクション イカット 絣に見るインドネシアの色とかたち」吉本忍 (平凡社) 
「技術シリーズ 染・織」岩本秀雄 佐藤弘幸 平栗昇 松岡芳郎 窪田宏 鈴木安良 (朝倉書店)


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