滋賀県立大学人間文化セミナー


演題:「ピロロキノリンキノンはビタミンだった?」

演者:笠原 和起 氏 (理化学研究所 脳科学総合研究センター)


主 催:滋賀県立大学人間文化学部
共 催:滋賀県立大学交流センター
     滋賀県立大学地域産学連携センター
日 時:2004年7月24日(木)15時〜16時30分
会 場:滋賀県立大学 地域産学連携センター 産学交流研究室
参加費:無料

問合せ:〒522-8533 滋賀県彦根市八坂町2500 滋賀県立大学人間文化学部
TEL 0749-28-8401  FAX 0749-28-8479


 本講演では,学内外から50人以上が出席し,盛況のうちに終了しました.
 笠原氏はピロロキノリンキノン (PQQ) という物質がビタミンの仲間であることを英国の科学雑誌「Nature」4月24日号に発表し,新聞やテレビなどマスメディアがこの発見を,「55年ぶりに新しいビタミンの発見」,「14番目のビタミンの発見」と大きく採りあげたことは記憶に新しいことです.今回の講演では,「ピロロキノリンキノンはビタミンだった?」と題し,PQQ研究に至る経緯,PQQ研究に関する最新の成果を披露されました.
 PQQは1979年に発見された化合物で, PQQ欠乏にしたマウスには生育不良や脱毛,皮膚障害などの異常が観察され,栄養学的知見からビタミンの候補として考えられてきました.しかし,生体内での具体的な役割が全く不明であったため,ビタミンとして認められていませんでした.笠原氏の本来の研究は躁うつ病の原因解明であり,コンピューターを使って躁うつ病に関わる未知の遺伝子をマウスのDNAデータバンクから検索していました.見つかった遺伝子は躁うつ病とは無関係でしたが,せっかくだからという研究リーダーの助言によって研究を続けた結果,必須アミノ酸の一つであるリジンの分解に関係する遺伝子であることがわかりました.さらに,この遺伝子がコードする酵素は PQQを必要とする可能性を見出しました.長年ビタミン研究者がマウスなどの哺乳動物でPQQを補酵素とする酵素の発見に心血を注いで探していた酵素でした.したがって,笠原氏は,PQQは新しくB群ビタミンの一員に加えられるべきであると,主張しています.
 最先端の技術を駆使し,生命科学研究の限界に挑戦する姿に会場は感嘆するばかりでした.笠原氏によると本講演はPQQに関する初めての講演であり,貴重な話を聞くことができたと思います.講演後はPQQをビタミンとして認めることができるのかという点についての活発な質疑応答が行われました.本講演で披露された成果はPQQがビタミンである証拠の一つになりうるが,これだけではまだ不十分だと思われます.現在,PQQ研究に関する複数のプロジェクトを進めているとのことであり,今後の研究の進展が楽しみでもあります.なお,翌日の京都新聞には本講演会が写真付きで紹介されました.

  



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