◆黒田末壽/黒田末寿(KURODA, Suehisa)2002/2003年度活動概要
◆◆2002年度◆◆
◆さまざまなことがあって全部を思い出すことが難しい。世界も日本も政治・社会状況がますます不透明になりつつあるが、今年の卒業生たちがそれに負けずに元気がいいのは本当にうれしい。環琵琶湖文化論実習では湖東町・大沢の方たちが学生をホームステイさせてくださった。学生たちには落ち着いた地域の生活が強く焼き付けられたようだった。湖風祭には学生諸君が地域文化学市場を企画して大沢の方たちも招くことができた。無農薬栽培の畑もまる6年。チンゲンサイが最高においしい。暮れから全学の有志とエコキャンパス計画をはじめた。大学を循環型社会のモデルにすべく、春から活動にはいる。
◆研究活動
6月 シンポジューム「出産の進化と歴史--分娩をめぐる身体・他者・制度」に参加・コメント(人類学会進化人類学分科会主催、京都)
8月 カナダ多文化社会における日系移民のアイデンティティの変容会議に参加・発表(Changing Japanese Identities in Multicultural Canada Conference, ビクトリア大学・アジア太平洋地域先導センター主催、ビクトリア)
9月 国際人類学会中間会議シンポジューム:Human Body, Appliances and Technological Culturesに参加・コメント(国際人類学会主催、東京)
10月 全体構造法全国研究会招待講演「ボノボ/ピグミーチンパンジーのコミュニケーションが意味するもの」(JIST研究会主催、静岡)
12月 シンポジューム「進化を考える」に参加・コメント(プリマーテス研究会主催、犬山)
論文:「後氷期におけるニホンザル頭蓋骨形態の小進化」Asian Primatplogy vol. 2:115-125.
「写真に見る滋賀県の戦前カナダ移民の文化変容」(印刷中)
「ボノボ/ピグミーチンパンジーのコミュニケーションと言語の基盤」JIST (全体構造法学会誌)vol5: 1-5, 2003
「溜池のある風景:特殊重粘土地帯の農と風土」(村井康彦・西川幸治編著、思文閣、印刷中)
「人は肉食をやめられるか:霊長類のたち場から」(ヒトと動物の関係学会誌、印刷中)
著書:『アフリカを歩く--フィールドノートの余白に』共編著、以文社。ブラックアフリカが病と内覧で塗りつぶされているかのようなマスコミ報道に対抗し、人々の生活の確かさと自然の魅力を具体的に現し伝えるためのエッセイ集。私のエッセイは豆の巨木の話。
◆社会貢献
安曇川町教育委員会主催の講演などを数回。
◆◆2003年度◆◆
◆毎年、卒論には感動することが多く、多少しんどいが楽しみな作業である。ここ数年、自分の半生を振り返り地域社会や家族の問題を考える卒論が一つの流れを作っている。必然的に親とのさまざまな関係、深い信頼、葛藤の泥沼や、死に別れた親のイメージに重ねる自己の成長、親と故郷で生きる決意などを読むことになり、それを通して学生たちが、この4年間に親との関係でもおとなになったこと、それを社会の中で生きていく自信の根拠にしていることなどがわかってくる。地域文化学科の存在価値があったと思える瞬間である。また、近江猿楽多賀座の協力を得て、県大内に現代猿楽グループができた。万燈祭、湖風祭、高谷先生最終講義に大活躍である。これも楽しい。
◆今年度春から学内教員・学生有志でエコ・キャンパス・プロジェクト(http://www.shc.usp.ac.jp/ecocampus/index.html) を開始した。専心できず応援団のようになってしまったが、活動は軌道に乗り、本学の環境マネッジメント・システム(EMS)の一部を担う存在に発展しつつある。
◆4月:自閉症児のお母さんたちの「メロディーの会」に対応するボランティアグループ「ハーモニー」発足、甲良養護学校の先生の指導を受けて順調に発進。顧問:黒田・竹下。
◆5月:日本記号学会で「表情と情動:個と共同性の間」シンポジュウム・パネル参加。来年度から情動研究会の発足準備。
◆7月:国際人類学会(フィレンツェ)でチンパンジー属の食物分配について発表。会場のフィレンツェ大学博物館で調査、これまでの資料と併せて、コンゴ民主共和国中央のンガンドゥ族の婚資が南部ルバ族の武器由来と判明。
◆7月:京都大学霊長類研究所で「ボノボ保護国際会議」、保護策、エソグラム作成など討議。
◆9月:NPO「平和環境もやいネットワーク」発足。代表:高谷・古川久雄。
◆11月:東京外語大学「欲望と資源」シンポジュウム・パネル参加。欲求の抑制が分配を生むと同時に欲望も生むことなど発表、欲望の拡大・欲望を欲望することと抑制の意味などについての討論。
◆2月から「人と地域」NPO(戸田雄一代表)、湖西地域住民有志・県立大有志と「湖西市民大学」の企画を進めている。
◆3月は卒業式・国際会議・講演・報告書作成・諸先生の退職記念行事で休む暇がなさそう。
◆ 論文は『文化人類学文献事典』に伊谷純一郎著『霊長類社会構造の進化』など3点の解説、「歴史に学ぶ?循環型社会と冷たい社会の論理」(『環境会議』)など。
◆ <畑からの報告>
2003年の秋はなぜだか行きつけの種屋数軒に青梗菜の種がなく(理由は聞いていない)、ほんの少ししか作付けしなかったが、霜が降りる頃になると葉っぱが甘くなってとてもおいしい。ここ数年、冬でもモンシロチョウの青虫がたかっていたのに、1月の急な冷え込み以前の暖かい時期にも青虫はほんの少数しかいなかった。作付けの条件を一定にして(菜っ葉をどんどん食べていくので、むずかしいが)ここ数年間のデータをとっていれば、冷え込みを事前予測しているのかどうかも含めておもしろい解析ができたかもしれない。現在、ルッコラ(ロケット)が最高においしい。昨秋イタリア人の友人から「こんなおいしいルッコラはイタリアでも食べたことがない」とほめられた。やや香りが落ちたものの依然健在。