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研究調査の課題:滋賀県における在日コリアン1世の生活史に関する聞き取り調査

研究調査の大要

【目的】滋賀県在住の在日コリアン1世の生活史を面接調査し、記録に残し、県内の在日コリアン定住の歴史的経緯や現在の生活実態等を明らかにすること。

【実施するに至った理由】滋賀県内で「韓国・朝鮮籍」として外国人登録されている人口は、現在は約6500人で、これに日本国籍者を加えると、少なからぬ在日コリアンが生活している。滋賀県における在日コリアンの生活史は約100年に及び、敗戦前後のピーク時には2万人をこえる在日コリアンが居住していたと推定される。しかし、その定住の経緯や生活史の実態の調査は、在日コリアン定住者の多い近畿地方の近隣他府県に比して、著しく立ち後れている。文献資料が限られている中で、これらの調査をするためには、渡日1世からの聞き取りが不可欠であるが、本格的な実施がなされないまま、高齢化ばかりが進み、1世からの聞き取りは、今すぐに着手しても遅すぎるほどである。

 また、在日コリアン高齢者は多くが無年金者であるなど、抱えている問題が日本人高齢者とは異なっていることが大阪などでの既存研究で明らかになっているが、滋賀県においては在日コリアン高齢者の実態がきちんと把握されているとは言い難く、さまざまな施策を提案するための基礎的情報も欠けているのが現状である。

 幸い、2004年にオープンした滋賀コリアン生活サポートセンターには、朝鮮総聯、韓国民団などといった、従来、在日コリアン社会を隔てがちであった所属組織を越え、多くの県内在住の1世たち集っている。この人的ネットワークと信頼関係を生かせば、これまでにない幅広い聞き取り調査が可能であると判断した。

【意義】先に述べたように、滋賀県において、本研究調査に類するような調査はこれまでに行われたことが無いため、調査を実施し、記録に残すこと自体が非常に意味のあることとなる。

 近隣府県である大阪や京都のような大規模集住地区こそ抱えていないが、滋賀県各地に在日コリアンの足跡は数多存在する。しかし、問題意識の欠如や事実関係の把握が不十分なため、そのことをしっかり見据えた上で、自治体史をはじめ、地域社会を記述することは、これまでほとんどなされていない。この「不在」の意味を問い、滋賀県の在日コリアンの歩んできた道のりを聞き取り、記録に残すことで、はじめて真に「共生」の未来を築くことができる。

 より直接的には、現在、県内の在日コリアン高齢者の抱える問題を具体的に明らかにすることにより、大阪や京都など、在日コリアンがある程度集住している地域とは異なり、琵琶湖を囲んで分散居住している滋賀県の特徴や実態が明らかになり、在日コリアン高齢者福祉施策を進める上での基礎資料をつくることができる。

【研究代表者】京都造形芸術大学客員教授 仲 尾  宏

【共同研究者】滋賀県立大学 人間文化学部 講師 河かおる
         NPO法人 滋賀コリアン生活サポートセンター 理事長 全敬子
         NPO法人 滋賀コリアン生活サポートセンター 副理事長 清水義昭

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