You are here:文化的景観
文化的景観とは、地域における人々の生活や生業、風土により形成されたもので、地域における生活や文化を理解する上で欠くことのできないものである。 濱崎研究室では、滋賀県の近江八幡市、高島市、彦根市などにおいて、建築、集落構造、生業などの調査、分析をとおして、文化的景観の研究を進めてきた。 また、平成17年4月の文化財保護法の改正により、重要文化的景観の選定がおこなわれ、新たな文化財保護の手法が用いられるようになった。滋賀県では、平成18年に「近江八幡の水郷」が選定され、平成20年に「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」が選定された。 濱崎研究室では各自治体や他の研究室と連携し、今後の重要文化的景観の運営方法や、改善点などについても研究を進めている。
近江八幡市 ・西の湖周辺の水郷
西の湖周辺の水郷 水郷と深い関わりを持ち形成されてきた円山、白王の集落構造の分析をおこなってきた。また、水郷の景観は、葭や農業などの生業と深く結びつき形成されてきたため、西の湖周辺の漁業、農業、葭などの生業に関する調査を行っている。今後、西の湖周辺の景観を維持していくためには、継続的な生業をおこなって行くための手法が大切になってくる。生業などについては、本学環境科学部などと協力しながら模索していく。また、西の湖周辺の集落や島状の田の護岸は石垣でつくられている。今後、石垣護岸の維持管理についても持続可能な方法の検討が求められており、東京大学篠原修研究室と共同で調査を進めていく。
西の湖周辺の水郷 水郷と葦
近江八幡市 ・八幡堀
1580年初頭、豊臣秀次の八幡城下の建設が行われた。八幡堀は城の堀としての機能を失ったあとも、八幡商人の活動の場としての機能をにない、琵琶湖の舟運の拠点として重要な役割をになってきた。城下建設以降、堀はその役割を様々に変化させ現在にいたっている。現在、濱崎研究室では、人々の営みによって形作られてきた、八幡堀の変遷過程、及び堀周辺の空間構成について研究を進めている。
八幡堀と蔵 八幡堀の石垣
高島市 ・海津・西浜・知内の水辺
海津・西浜・知内の水辺は、琵琶湖の舟運の拠点として、古くから重要な役割をはたしてきた。琵琶湖湖岸に沿うように石垣が残りっており、荷揚げのための階段が設けられている。また、各住戸のあいだには、湖岸から集落の中央を通る西近江路まで、ヅシと呼ばれる路地が設けられており、舟運の拠点として使われていた当時の様子を伺うことができる。今後、近江八幡と同様に、重要文化的景観に関する研究、及び今後の計画について研究を進めている。
琵琶湖からの景観
高島市 ・針江
琵琶湖の西側に位置する高島市新旭町針江やその周辺の深溝・藁園では比良山系に源を発する安曇川の伏流水が集落のいたるところで湧いており、この地域では各家に「かばた」と呼ばれる水屋が設けられ、現在も利用され続けている。一般的に「かばた」とは、飲料水を汲む「元池」、野菜や茶碗などを洗う「坪池」、食べ残しなどを食べて水を浄化してくれるコイやマスを飼っている「端池(はたいけ)」の3槽からなる自家湧水の洗い場のことである。針江の「かばた」には、母屋や倉庫など建物の中に取り込まれた「内かばた」と、外部に独立してある「外かばた」などがあり、その利用方法も様々である。針江では生水(ショウズ)と呼ばれる湧き水が豊富で、今でも多くの「かばた」が使われている稀少な集落である。濱崎研究室では、集落の空間構成や変遷、建築の実測調査、「かばた」の使用方法などの調査を進め、今後の計画について研究を進めている。
かばた 水路際のかばた
彦根市 ・男鬼
鈴鹿山系の山中には古くより山村集落が点在している。人々は林業を生業とし山の恵みを受けながら生活を営んできた。自然と人間の営みによって形成されてきた文化的景観である。しかし、高度経済成長等による社会の急激な変化によって林業が衰退、生活上の不自由さから離村が進んだ。そのため鈴鹿の山々の比較的標高の高い小集落は廃村となった集落が多い。廃村となった集落は荒廃が早く、山村集落の伝統的な景観は、戦後急速に失われてきた。そのなかで、彦根市男鬼町は昭和46年に廃村となりながら、寺を含む9棟の民家を残し、伝統的な景観を維持している。濱崎研究室では、平成15年度から民家の実測調査を行い、湖東地域の山村集落としての民家及び住空間の特徴を明らかにしてきた。今後は、集落や建築の維持などの手法を含め、他の鈴鹿山系の山村集落の空間構成と建築特性についても研究を進めている。
男鬼の集落景観
報告書
・『安土・八幡の文化的景観保存活用事業報告書』 安土・八幡の文化的景観保存活用委員会(平成18年3月)
・『重要文化的景観選定地区 石垣・護岸調査報告書』 近江八幡市(平成20年3月)
・『高島市海津・西浜・知内の水辺景観』保存活用事業報告書 高島市海津・西浜・知内地区文化的景観保存活用委員会 (平成20年3月)
・『よみがえるふるさと男鬼』男鬼楽座(平成18年3月)