エキスティックスとは人間居住の科学という意味でギリシャのドキシアディス博士が1960年代のはじめ頃から提唱し始めたものです。世界の有力な学者や実務家が学際的に参加し、この分野では世界的に重要な学会です。歴史家のアーノルド・トインビー、人類学のマーガレット・ミード、建築家・技術者のバックミンスター・フラー、丹下健三、芦原義信、社会学者の磯村英一など錚々たる学者が会員でした。現在は建築理論家のクリストファ・アレキサンダー、エイモス・ラポポートなども会員です。現在会員数は世界中で200人弱。
私の若いとき1965年にアテネのエキスティックス研究所に2年間留学しました。そこでは夏になるとエキスティックス月間ということで、世界中から学者や学生がアテネに集まり、シンポジウムが開かれました。その中の一番重要なのがデロス・シンポジオンで、一週間の間、学際的な学者や実務家が約70〜80名ほどがエーゲ海を貸切の船でクルーズしながら、午前中はシンポジウム、午後はエーゲ海の各地を巡り、見学するというゆったりとした贅沢な会議でした。元来シィンポシォンは古代ギリシャでは宴をしながら討論を交わすということだったようで、このデロス・シンポジオンもそれに倣ったものでした。私は1966、67年と留学していたときに、スタッフとして二回参加しました。一回は丹下健三先生とご一諸でした。会議の経験ともども、大変貴重な経験をさせていただきました。
以上は1960年代に始まり1975年代にドキシアディスが亡くなるまで続き、その後はWSEにひきつがれ、毎年世界大会と研究発表のシンポジウムを世界各地で開いています。本学で予定している世界大会は資金のこともあり、デロス・シンポジオンのように豊かにはできませんが、出来るだけ立派な大会にしたいと思っています。