おばあちゃんの裁縫道具と材料の考現学的調査

大串 芽衣

LD賞2014

 現代は安くて可愛らしい洋服が簡単に手に入る世の中である。戦後洋服を作る行為は、家族が普通の生活を送るためにやらなくてはいけない行為と言っても過言ではないものであったが、高度経済成長を経て暮らしに余裕ができ、女性たちは実用性のある服だけでなくお洒落を考えた服を作ることに楽しみを覚えるようになっていった。裁縫を、“やらなくてはいけない行為”として捉えるのではなく、“趣味の一種”として捉える女性が増え始めたのである。

 そのような洋服を作ることを可能にさせた綺麗なリボンやレースなどの材料や道具たちの出現が暮らしを華やかにしていった過程や、その材料や道具たちが今どのような形で保存されているのかを知りたいと思い、この研究に着手した。