織物産地の豊かさを伝えるファッションブランドの提案-生地の特性を生かしたパターンの考察-

石田 菜奈実

 国内には永い年月をかけて文化や技術を継承してきた有数の綿織物産地が存在する。しかしファストファッションの大衆化によって海外製品が多く溢れている今日では、高い技術や優れた製品があるにもかかわらず、日本の繊維製品の良さに気づきづらいのが現状である。私はこの現状に対し、日本の固有の綿織物を、より多くの人に知ってもらうことができないか、それが服のデザインによってできないかと強く感じた。そこでひとつの産地の生地だけでなく、さまざまな異なる産地の生地を、ひとつのコンセプトでデザインし、単一の生地では出せない新たな服の価値について提案したいと考えた。既に各産地では産地ごとに製品開発が手がけられているが、複数の産地の織物をひとつのまとまりとしてデザインしたファッションブランドはみられない。
 生地は実際に産地に出向いて風合いや特徴を調査し、自分自身が現場を見て感じながら選択した。また、デザインは織物の味わいをこわさずに、その特徴を伝えることが大切であることから、生地特性に合わせたドレープや張り感を基に、服のシルエットとして共通した感覚が出せるようパターンを考案し、服のデザインに取り組んだ。制作の結果から生地とパターンの関係を考察するとともに身に纏うことで心が豊かになる日常着を目指す。